自覚
「奈美ちゃん、、、あのさ、、好き。好きです。僕と付き合ってください。」
その言葉を、私は信じることが出来ずに固まってしまっていたと思う。
嬉しいけれど…よくわからない感情に呑まれた。
「奈美ちゃん、好きです。僕は木原さんたちみたいな年上じゃないし、そもそも頼りないと思うけど…だけど、きっと奈美ちゃんを誰よりも幸せにする。」
こんなにも熱烈な愛を受けて、断らないわけがないじゃない。
だけど、心の奥に何か引っかかる物があって、今は爽ちゃんが隣にいるのに木原さんだったらな、なんて考えてしまっている。
その時に私は初めて気がついた。
私は木原さんが好きだ。
どんなに他の人が可愛いだとか綺麗だとか褒めてくれても、木原さんのその一言には劣ってしまう。
どんなに他の人が美味しそうに私の料理を食べてくれたとしても、木原さんの"おいしい"の一言には埋もれてしまう。
あの時、木原さんが話しかけてくれなかったら、いや、私が図書館で勉強をする癖なんかなかったら出会うことは無かった。
きっと、今でも達斗への想いが断ち切れないまま過ごしていたのかもしれない。
私の目の前には私を好きでいてくれる人。
爽ちゃんはとても誠実だし、優しいし、何事にも一生懸命でとてもかっこいい人だと思う。
けど、私が好きなのはきっと木原さんなんだ…
そうなると、私を好きだと言ってくれるこの人が、次へ進めるようにきちんと断らないといけない。
私の心はやっと整理がついて、口を開いた。
『爽ちゃん……ごめんなさい。
どうやら私には好きな人が……いるみたいです。
けど、すごく嬉しかった。伝えてくれてありがとう』
私がそう言うと彼は今にも泣きそうな顔で苦笑して、
「はは、実は知ってた」
『え』
「僕に気づかれるなんてそれくらい普段から顔に出てたってことだよ!!
あ、これからもいつも通り接してよ?僕、応援してるから、今度は奈美ちゃんが頑張れ。」
爽ちゃんは結局、家まで送ってくれて私に向けてもう一度
「頑張れ!」
と、言ってくれた。




