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蛍は焦げる  作者: 愛璃
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艶やかな君

合宿も終わり数日して、皆またまたゆる〜い部室に集まり出す。


だけど、今日は何だか頭が痛くて私は少し早めに帰宅した。


次の日、案の定私は熱を出してお休みすることにした。


前に連絡なしに部活に行かなかったら死ぬほど心配されたのでとりあえずここは部長の木原さんに連絡しておくことに。


『もしもし…』


「もしもし、奈美ちゃん?どうした?」


『今日は熱出ちゃったのでおやすみします…』


「あちゃ〜、奈美ちゃん風邪ひいちゃったのか」


木原のその声に反応して遠くから部室に現在いるであろうメンバーの声がする。


「きっと、あんな寒い中ベランダにいたからだよ。」


「え?でも僕は何ともないですけど…、」


「いや、爽ちゃん、何とかは風邪をひかないって言うじゃん?」


「つまり僕が馬鹿だと言いたいの?!」


なんてやり取りが聞こえてきて思わず笑ってしまった。


「まあとりあえず、お大事にね!」


木原さんにそう言われて返事をしてから電話を切り、私は眠りについた。



山浦が荷物を持って部室を出ようとする。


「あれ、山浦、帰るの?」


「おう」


築田が呼び止める。


「だいたい土日なんか誰もいない方が多かったもんな〜。」


「奈美ちゃんがいるからみんな集まるんだろうね。」


「いや、あの子の魅力は計り知れんな、すげえ。」


口々にそのような話があった後にまとめとして、


「そう、というわけで帰る。」


と言ってドアを開けて行ってしまった。


彼らの仲が悪いというわけは決してない。

元々、天文部は仲良しの集まりのようなもので溜まり場を作るためのようなものだった。

たまたま出た大会で注目されて木原や山崎が参加して今や有名校となったがそれまではただの遊びのような部活。彼らの居心地のいい場所。

これが彼らの本来のスタイルだった。


「まあ、とは言っても最近ずっと人がいたから、今までの俺たちの当たり前がちょっと寂しく感じちゃうね。」


熊井が感慨深く言った。


「じゃあ俺は、奈美ちゃんのお見舞いにでも行ってこようかな」


そう言って木原がソファから立ち上がると築田が何かを思い出したように部室を出て行く。


数分後、帰ってきた彼の手に握られていたのはスーパーの袋。


スポーツドリンクだとかゼリーだとかが入っていて、お見舞い行くならこれ渡しといてと木原の手に持たせる。


「え、築田さんずるい俺もあげる!」


と、かばんの中からスポーツドリンクを出して木原に渡す。


山崎も持っていたチョコレートを渡した。


奈美に家に向かうという連絡を入れて木原は向かう。



ピンポーン



2回目のインターホンが鳴る。


今度は誰だろう…出てみると目の前にいたのは木原さん。


「調子どう?」


『わざわざお見舞いに来てくれたんですか…』


これ皆から、と言って差し出された袋の中にはスポーツドリンクだとかゼリーだとかたくさんはいっている。


菌だからですが、お茶飲んでいきますか?と冗談を言うと


「喜んで」


と笑って入る木原さん。


机に置いてあった2つのコップのうちの1つをさげて、新しいのに紅茶を入れて木原さんの前に置いた。


「あれ、誰か来てたの?」


『実はそれこそさっき山浦さんもお見舞いに来てくれて…』


そそくさ帰ったと思われた山浦が、奈美の家に寄っていたとは露知らず。

それよりも…風邪を引いていつもより頬が火照っている奈美は色気が溢れていて、このままここにいると理性が危ないと思い、木原は早急に去って行った。


『わざわざありがとうございました!』


「お大事にね」


自分は最後まで理性を保てていただろうか。

木原はそう自問しながら帰り道を歩いていった。

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