甘い雰囲気
コトコト…
鍋の煮える音といい香りで目覚める山崎。
案の定、朝から奈美が食事を用意してくれているようだ。
「おはよう」
後ろから声をかけるとびっくりした様子の奈美。
『え、達斗が1番とか信じらんない!今日嵐でも来るんじゃないの?』
なんて冗談言って笑う奈美を今日も愛しく感じる。
「なんか手伝うことある?」
忙しそうな奈美だけど、ちょっとでも会話を繋ぎたくて話しかける山崎。
食器類を並べるように指示されて言われたままに綺麗に並べていく。
まるで新婚のようだな、と思い耽っていると、
「おはよう〜」
目を擦りながら起きてきたのは濱元と築田。
束の間の新婚生活気分もここでおしまいとなる。
「何作ってるの?」
ぴょこっと後ろから顔を出して鍋の中を見る俊くん。
築田さんは匂いを嗅いだだけでシチューかな、と予想している。
『ピンポン!シチューです!』
だいぶ出来上がってきてあとはもう皆さんが起きるのを待つのみ。
「おはよ」
「おはよー」
美味しい匂いにつられて起きてきちゃったよと笑う皆さん。
「シチューじゃん!!」
お皿によそっていると横から興奮した声が聞こえる。
『爽ちゃん、おはよ』
寝癖が酷くついたままそこに立っている爽ちゃん。
周りを見れば同じくぴょんとはねた髪が所々にある皆さんの珍しい姿にほっこり。
そのまま食卓をみんなで囲んで遅めの朝ごはん。
「うまっ」
私が感想を聞く前に美味しいと褒めてくれる声。
『こういう時はシチューって感じで…』
「それめっちゃわかる」
築田さんが食い気味に回答する。
おかわりはいっぱいあるから欲しかったらセルフで…と言った途端に口の中にかきこんで、満面の笑みで
「おかわりっ!」
とお皿を手前に出す熊井さん。
なるほど、つげってことか笑笑
「今、おかわりはセルフでって言われたばっかじゃん」
と笑う山浦さんを無視して、
「おかわりっ!」
とまた聞える声。
今度は木原さんで、だって奈美ちゃんについでもらったほうが美味しくなるじゃんという訳の分からない謎理論。
『喜んでおつぎしますよ』
と戻ってくるとお皿を持って構えている様子の俊くんと爽ちゃん。
このあと、結局全員おかわりするものだから私が何回キッチンと食卓とを往復したことか…。
今日も観測のためにお昼寝。
でもその前に皆でトランプを始めた。
爽ちゃんがいやに大荷物だと思っていたら、他にもジェンガだとか、人生ゲームだとかいっぱい持ってきてたみたい。
ババ抜きだとか大富豪だとかしたあとはお昼寝タイム。
今は私がどこで寝るかの争奪戦で…。
木原さんが「おいで」と、隣をポンポンしていると、
「お前は前科ありだろっ!」
と熊井さんが投げた枕が顔にクリティカルヒット!
「俺たち、朝見てたんだぞ!お前はダメだ!」
「は、嘘だろ!」
と顔が赤くなる木原さん。
朝……?
「じゃあ僕の隣おいで」
「築田も爽やか面してるけどだだかんね?」
「じゃあ僕のとこおいでっ!」
「この爽やか面コンビが一番危ないだろ!!」
なんて会話が繰り広げられた挙句、結局じゃんけんで決待った結果、爽ちゃんと熊井さんの間で寝ることに。
他の人にダメ出しをしていた癖して、起きた時に熊井さんが私のことを抱き枕のようにして寝ていたために集中砲火を食らっていた。
けど、いざ観測となると皆さん集中な趣で始まって、無事に観測は成功。
きっと奈美ちゃんは星に好かれてるんだね、と少々クサイセリフを吐く山浦さん。
星空の下ということもあって、少しロマンチックに思えてしまった。
そのまま年上組は酒の宴へ。
興奮しすぎて熱くなり、ベランダへ出た中竹。
星空を眺めていると戸が開く音が聞こえて振り返るとそこには奈美がいて、隣に立って同じく星を眺めている。
『外はやっぱり寒いね』
当たり前か、なんて笑う奈美は綺麗な夜空がバックに映えていつもよりも何倍も美しく見えた。
「ねぇ、奈美ちゃん、あのさ…「2人ともー!ジェンガするよ!!」
無意識に開きかけた口を、濱元の声のおかげで閉じることが出来た。
『あ、ごめん爽ちゃん、聞こえなかった…』
「いや、いいよ。行こっか」
そう言うと濱元の後を追って走っていく爽。
「てかなに勝手に人のかばん漁ってんだよぉ!!」
危ない、思わず告白してしまうところだったと誤魔化すために大声を出して中竹はその場から離れた。




