居心地の問題
三日後…
今回は県外だから朝早くから駅に集合。
朝だから気温も低いし、皆さん眠気眼を擦ってのご登場。
これは朝に弱いとかじゃなくて(まあ私と達斗が朝に弱いのは本当だけれど…)、夜の観測をより充実させるために目的に着いたらお昼寝をするから。
「おはよ〜」
『おはようございます』
珍しく最後に着いたのは築田さんで、電車にはギリギリ間に合った。
『珍しいですね、築田さんが遅れるなんて…』
「ごめんね、ちょっと昨日調べ物してたら普通に入り込んじゃって」
電車間に合わなかったらどうすんだよ〜と木原さんたちが笑い飛ばす。
皆さんこれから寝るために眠たいまま出来ているから心做しかテンションが低いご様子。
無事に山浦さんの別荘につき、前回同様、観測の準備を整えたら皆でお昼寝…のはずなのだか、
山浦さんの別荘…大きなロッジって感じでものすごく綺麗。
私の語彙力がないから上手く伝えられないけど、言うなら
【The・別荘】って感じ。
築田さんが言っていた通り、中もとても綺麗で色々と揃っている。
山浦さんの元々の趣味が天体観測だったからか、ここにはたくさんの天体観測用の機材が揃っていて木原さんは興味津々。
「さわっていい?さわっていい?」
と言わんばかりに目を輝かせ、今にも機材に飛びつこうとする木原さんは、新しいおもちゃを目にした犬のよう。
「ほら、それよりも準備!」
熊井さんに剥がされて虚しくもワクワクした顔で皆さんと準備を始めている。
準備にそんなに人数入らないとみて、これからお昼寝するためのココアを準備して皆さんにお出しする。
それじゃあおやすみ〜と、皆さんと部屋をわけられて眠るけどなかなか寝付けない。
部屋が寒いとかそんなのじゃなくて、私の好きな暖かさはこれじゃない…と思いお布団と枕を持って皆さんのお部屋に向かった。
目覚めると木原の目の前にはすやすやと眠る奈美の姿。
一瞬理解することが出来ず、夢か錯覚かと思ったり、奈美が部屋を間違ってきたのかなどと考えてみたが周りを見渡せば人数分の枕と毛布。
奈美が自ら移動してきたのだと理解する。
自分の隣を選んで寝てくれたのかと思うと嬉しくて、愛しくて、その細く綺麗な髪を優しく梳く。
女だということを意識させてくる甘い香りにうっとりしていた。
その時、もう既に起きていた山崎は木原のその行動を見ていた。
やるせない自分の気持ちと、素直な心で奈美に向かっていく木原との心の差は未だに縮まらないままだ。
先程とは違い心地の良い暖かさに私は目を覚ます。
目の前には木原さんがいて、私と目が合った。
『わ…おはようございます』
「おはよう、びっくりするのはこっちだよ。起きたら奈美ちゃんがここにいるんだもん。」
なんて寝たまま向かい合って話していると、他メンバーも起きたよう。
「んぅう〜…おはよ…え!奈美ちゃん!?」
「何言ってんだ、奈美ちゃんは隣の部屋…え、奈美ちゃんじゃん、」
俊くんに突っ込みをいれながらも自分も同じことを言う熊井さん。
皆さん起きたらまずビックリしていたけど、こっちの方が寝心地良くてと伝えると理解してくれた様子。
「俺たちやったからこれで済んだけど、他のとこで同じことすんなよ」
奈美の頭を撫でて起きながらそう言う山崎。
彼のもどかしい恋心をぶつけるには今のこれが精一杯なのであった。
前回と同じようにはいかず、今日は観測ができなかった。
「まあ、前回が異例だっただけだし落ち込むことは無いよ」
と言いながらも自分が1番がっかりしている爽ちゃん。
じゃあもう今日は諦めて中に入りますか、と木原さんが言うと皆で中に入ってゆっくりモード。
『Happy Birthday to you〜』
と、電気を消して歌いながら手作りのケーキを持って私は皆さんのいるリビングへ。
本当は来週が山浦さんの誕生日だけど、全員が集まれる見込みはないから今日誕生会をしよう事前にメンバーと話し合っていたのだ。
「ロウソク吹き消して!ふーーーー!!」
「なんで木原が消しちゃうの」
理解が追いつかなかったがロウソクの火を吹き消したのは何故か木原さんで、電気をつけるとそれを笑っている山浦さんの笑顔が見れた。
改めて、誕生日おめでとう!と皆に祝われて少し照れている様子の山浦さん。
ケーキが手作りであることを伝えると嬉しそうに頬張ってくれた。
ケーキを切るのが面倒くさくて全員でつついて食べることにはなったが、皆さんしきりにフォークが口へ向かっていてあっという間になくなってしまった。
「来年は僕の誕生日でもケーキ作ってね」
と、築田さんに単独予約をされたので張り切って作りたいと思う。




