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蛍は焦げる  作者: 愛璃
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みずくさい

ついにやってきた徳進祭!


お揃いのユニフォームを着て臨むのは今年初登場の私たち天文部。


そういうわけで少し注目度は高いようだ。


昨日捻った足はまだ治っておらず少しぎこちない動きをしてしまっている気がする。


心做しかちょっとだけ赤くなってたし、終わったら保健室にでも駆け込もうと心に決めていた。


まあ私がぎこちない動きをしていたせいで昨日の時点で疑われていた築田さんに体育館から連れ出され、


「大丈夫なの?なんで言わなかったの」


と試合前にお叱りを受けている最中なのであります。


『頑張らせてください!!』


も〜…無理はしちゃダメだよ、と軽く頭をコツンとされたあとにとびっきりの笑顔で


「頑張ろうね」


なんて言われたら頑張るしかないでしょう…!


1回戦目の相手であるバスケ部は背が高い人が多く威圧感が増している。


それにまんまと怯んでいる爽ちゃんと俊くんは置いておいて、皆で円陣を組んで気合は十分。


ボールはハンデとして私から投げていいよとのバスケ部。


随分と舐められているものだ、と私はスタートの笛がなった途端に思いっきりボールを投げた。


早速アウトとなった人が外野へ抜けていく。


てっきり私がほかのメンバーに渡してからスタートすると思っていたのか周りはおろか、メンバーまで皆さん目が点になっている。


「え?」


木原さんに至っては声まで出した!失礼!


私はその後も大活躍を果たし、私たちはバスケ部相手に一勝してしまったのだ!


「ちょっと、ちょっと!?

奈美ちゃんがそんなに運動できるなんて聞いてないんだけど!」


試合が終わるといきなり大声を出す爽ちゃん。


『実はやんちゃだったのでよく男の子とまざってドッヂボールとかやってました!』


という事後報告。


「くっそ〜!!!俺たちがかっこいいところを見せるためのイベントだろーがよー!!」


なんて熊井さんは頭をわしゃわしゃしながら言っている。


『そんな!皆さん頑張っててかっこよかったですよ!!』


木原さんや熊井さんは本当に宣言通り、私の前に立ちはだかってボールを取ってくれていた。


だから2人が当たってしまって外野に行ってしまったときはさすがに焦ってしまったけど、それよりも私がボールを取って外野にまわした時ほど皆さんの驚きの顔と言ったら…


「はあ〜、もうなんていい子なの。」


熊井さんはわたしの頭をわしゃわしゃと撫でてくれた。


「熊井さん、奈美ちゃんもプレイヤーだったんですよ。俺たちのことを見ることができるくらい余裕があるプレイヤーだったってことですよ…」


なんて木原さんが言ってがっかりしているけど、


『せっかくかっこよかったって本当のこと言ったのに、木原さんにはもう一生言いません〜!』


本当に守ってくれたりしてかっこよかったのにそんなケチつけてくるならもう言わないもん!


「ええっ!そんなっ!」


木原さんを横目に他のメンバーが、僕かっこよかったー?なんて聞いてくるからかっこよかったよー!と答える。


もちろん、木原さんから聞かれた時は全然!って言ってやりました。


そのあといじけちゃったものだから、


『木原さん、本当はかっこよかったですよ』


って言うと、知ってた!なんて言って回復するから可愛いなと思ってしまった。


その後も他の部を倒していき、ついに決勝。


さすがに野球部に勝つことはできずに準優勝で終わったけれど、私たち皆はもう大満足だ。


表彰式が終わって、トイレで着替えてから部室に向かうと偽って保健室へ向かった。


後ろから足音が聞こえて、それがだんだん近づいてきたところで振り返って見てみると築田さんだった。


どうやらあのあと追いかけてきてくれたみたい。


「やっぱり足痛いんじゃん〜」


そう言うといきなり私の前に屈んで、乗って、なんて。


「おんぶが嫌ならお姫様抱っこにさせてもらおうかな」


なんて言ってくるから大人しくおんぶされて保健室に向かった。


生憎、先生が不在で築田さんが手当をしてくれた。


「あーあ、赤くなってんじゃん…昨日あのあと冷やしたの?」


私が首を横に振ると、


「はぁ、怪我したらとにかく冷やすの!わかった?」


本日二回目のお説教を私にする築田さんはさながらお母さんのよう。


『お母さんじゃん…』


「お母さんって言ったら僕、怒る」


『あい』


思わず言っちゃったけど本人はお母さんって呼ばれるの好きじゃないみたい。


僕は男なんだからってその後いじけてたのは可愛かった。


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