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蛍は焦げる  作者: 愛璃
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人気のヒロイン

清陵祭2日目。


今日は中竹、山崎、山浦が奈美の演技を見るために最前列を陣取っていたのは言うまでもない。

また、昨日よりも会場に人が集まっていたのもきっと奈美がいるという所以なのだろうか。

劇が終わってすぐに奈美は天文部の持ち場についた。

一緒にいるあみだくじで見事奈美との担当を勝ち取った山崎は、先程撮った写真を奈美に見せて揶揄っていた。

交代の時間はあっという間にやってきて、熊井が奈美とのパートナーになった。

天文部に榊奈美がいるという噂をどこから聞いたのか、輩が集まってきたため、それを払い除けることの出来る自分が、当番に変わっていて良かったと改めて思った熊井であった。


「可愛い子は大変だね〜」


熊井がそう話しかけるも、自覚がないのか返事をしない奈美。

しっかりと目を見て、あれ聞こえてなかった?と問いかけると


『あ、私のことなんですか』


と微笑む奈美。

その笑顔は例えるならば天使そのもので、彼女のその笑顔見る度に自分が守りたいと強く思うのだ。


『あ、俊くんだ。もうそんな時間?』


濱元や中竹、山崎にはタメ口で話すが、年上組には必ず敬語を使う奈美。

敬ってくれている故の行動ではあるのだろうが、心做しか距離を感じてしまう。

交代で行ってしまった奈美の背中をひたすら視線で追う姿を見た濱元がふざけて


「奈美ちゃんじゃなくてすみませんね〜」


なんて言ってしまったから、それほどまでに自分の感情が剥き出しになっていることに気づいた熊井は恥ずかしくなった。


濱元と交代で木原たちと合流して学内を回ることになった奈美。

木原たちは全員で回るという提案に我ながら感心していた。

道行く人が奈美に視線をやっているのはきっと昨日と今日の白雪姫の反響だろう。


自分たちだけが知っている奈美は、もう皆に知られてしまった。

木原たちにはわからない奈美の世界が広がってしまうことに寂しさを感じた。


「あ、奈美〜!」


同じ学部の友達が、今日の打ち上げに誘ってくれたけど私は用事があるからと断った。


その用事…とは、本当かどうかはわからないけど今日は愛斗さんとの先約がある。


先に予約されたのだから約束は守らないと。


「あ、奈美ちゃんうちの打ち上げにも来れない感じ?」


木原さんがそう尋ねてきたけれど、同じことを言ってお断りした。


『すみません、今日は先約があって…』


「そ、俺とねっ!」


「どっから沸いた!?」


噂をすれば愛斗さんのご登場。


もちろん、びっくりする木原さんたち。


「いや〜、奈美ちゃん探しまくったよ〜連絡したのに見てくれてないからさ〜」


そういえば、劇の時から切ったままだったのを忘れていた。


爽ちゃんは愛斗さんを指さして未だ口をパクパクしている。


「え、なんでここに愛斗さんがいるんすか!」


実はこの前皆で遊び言ってた時に約束したんだよね〜、と私に言う愛斗さん。


「と、いうわけで姫は攫って行きます!」


とお辞儀をして私の手を引いて歩く愛斗さん。


『あ、ま、また今度打ち上げしましょうね〜!!』


私の声は木原さんたちに届いただろうか。


とりあえず、もう夕方だし夕食を食べようということになり、私たちがよく利用する大学から近いカフェに案内した。


この前の思い出話や、最近のもえきょんとの話、冬くんが木原さんに会いたがっている話など盛り上がって気づいたら2時間は経っていた。


愛斗さんが急に、海に行きたい!なんて言い出すから、海へ向かう。


砂浜を散歩しながら水面に浮かぶ月明かりを楽しむ私たち。


「あー、俺、奈美ちゃんみたいな妹が欲しかったわ」


私の目をしっかりと見てそういう愛斗さん。


『私も愛斗さんみたいなお兄ちゃんが欲しかったです!』


本当にいつも楽しそうで、いきなり現れたりしてびっくりするけど面白い人でお兄ちゃんとして理想の人。


「そっか」


愛斗さんはニカッと笑ってまた海の方を見た。


その笑顔が心做しか哀しく見えたのはきっと気のせいだろう。


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