表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛍は焦げる  作者: 愛璃
33/56

根っからのヒロイン

あれから数日たち今日はいよいよ清陵祭。

清陵祭は土日の2日間行われる大きなイベントで、各学部、サークルなどが挙って出し物をしている。

部室で最終準備を終えたあと、奈美は午前中学部での持ち場があるからと足速に去っていった。

奈美は自分がこれから外国語学部の出し物、英語劇で自分が主人公の白雪姫を演じるということをメンバーに悟られていないと思っていたがそんなことはない。

事前に熊井と木原の顔の広さから、噂はもちろん耳にしている。

ましてや奈美は知る人ぞ知るミス・陵徳(山浦がそう語る)で、もちろんそれを目にしたい人が会場に集まっていた。

簡易プラネタリウムの関係もあってじゃんけんに見事勝った木原、熊井、築田、濱元が会場ですでにビデオカメラを持ってスタンバイをしている。

その姿はさながら娘の初めての発表会を楽しみにする保護者のようだった。




ブー




開演のブザーが鳴ると、彼らの胸が高まる。


ナレーターの声と共に一際美しい白雪姫が現れる。


英語で行われている劇のため、舞台の背景に映し出されている字幕を目で追わなければ英語が苦手である彼らには何を言っているか理解できなかった。

しかし、それどころではない。

その白雪姫が…奈美の一挙手一投足が美しく、ドレスや照明のせいで奈美の魅力が一際目立っている。

見惚れている…という言葉よりも魅入っている、この表現が今の彼らには正しいだろう。


ナレーターの声と共に舞台に登場した私は最初のセリフを言おうと顔を上げた瞬間に何故か最前列を陣取っている4人組を見つけてしまった。


な、なぜここに…!!!


木原さんと熊井さんの間には3脚の建てられたビデオカメラが準備されており、思わずため息を出してしまいそうだった。


無事に劇を終え、残るは明日皆で頑張ろう!と意気込みをして解散したあと、その何故か最前列を陣取っていた4人組と合流する。


「奈美ちゃん、お疲れ様!まさに姫だったね〜!」


「奈美ちゃん。すごいわ。何言ってるかわからなかったけどすごい。」


「奈美ちゃんお疲れ様〜、綺麗だったね〜」


「すごく可愛かった!」


代わる代わるに褒めてくださる皆さんだけど、私が今聞きたいのはそれじゃない。


『な、なんで知ってたんですか…!』


きっと私は赤面していることだろう。


けれど、このあと私はもっと恥ずかしい思いをすることになる。


ヒントはビデオカメラ。


一般公開の時間が終わって部室で一日目のお疲れ様会。


爽ちゃんと山浦さんは何故かずっとソワソワしていて、


「木原さん、そろそろいいでしょ?」


なんて仔犬のような目で尋ねる爽ちゃんになんのことだろうと疑問を抱いていたが、熊井さんが鞄から取り出したビデオカメラを見て私は悟った。


「これ、めっちゃ性能いいやつだから。感謝して。」


そう言いながら部室にある巨大スクリーンにビデオカメラをセットする。


「ほう…さすが、綺麗ですね」


スクリーンを見ながら山浦さんがそう呟いた頃には、

私は顔から火が出そうなほど熱を帯びていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ