3/56
再会
部室に入ると直ぐ目の前にいる人物と目が合い、声が重なる。
重なったのは私と……達斗の声だ。
その瞬間、達斗は普段から木原が口にする奈美とは、彼の元カノである
榊奈美だったということに気づいた。
「あれ、2人って知り合い?」
木原さんのその純粋な質問に思わず口篭ってしまった私。
口を開いたのは達斗だった。
「昔1年くらい付き合ってたんですよ」
バッサリ、とその過去の事実を告げる達斗。
一見もう未練がないようなその言い方の裏には、まだ奈美のことが好きだからこそ
木原のマウントを取っておきたいという考えがあっての事だった。
「あ、そうなんだ…気まずいなら無理には誘わないけど……」
木原さんがそう言ってくれた。けど、さっきの言い方といい達斗はもう私なんかに未練がないんだろう。そう思うと私の負けん気が働いて、力強くこう伝えて見せた。
『いえ、ぜひ入部させてください!』