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蛍は焦げる  作者: 愛璃
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嘘から出た真

長い夏休講もついに終わり、今日から始業。


長かった、といえばそうなのだが今年は何かと色んなイベントがあったと思う。

特に、天文部の皆さんとは!


時間が過ぎるのがあっという間で、楽しい思い出ばかりだった。


と、こんなふうに感慨にふけっている場合ではない。


実は陵大生の今月は忙しいのだ。


奈美たちの通う陵徳大学では9月、10月と立て続けに清陵祭(文化祭)と徳進祭(スポーツ大会)が行われる。

まして忙しいというのに今月も奈美の予定表は空欄がないと言っても過言ではないほどスケジュールが詰まっていた。

清陵祭の準備に時間がかかるかと言えばそうでもない。

大会での結果発表をかねて、ポスターを展示したり大会での映像を流したりするスクリーンの準備程度。

今年は部員も増えたから、と木原が簡易プラネタリウムの作成と惑星模型の作成を提案したため、その準備が忙しいのだ。

とは言っても、9月の最後の週の土日に行われるため時間はまだたっぷりとある。

ゆっくりと準備するメンバー、この和気藹々とした雰囲気が奈美の大好きな天文部である。


簡易プラネタリウムの提案に激しく賛成の意を示したのは例にもなく山浦さん。


私と一緒に行ったプラネタリウムを簡略化して作りたいと考えていたのがこんなにも早く実現できる機会がくるとは!と1人で興奮していた。


今は理系組の熊井さんと俊くんが山浦さんを中心にして設計図を書いている。


築田さんの姿が見えないぞ、と探していると皆の飲み物を買ってきてくれたみたい。


そしてそのまま設計図には加わらずまっすぐ私の方へ歩いてきた。


「奈美ちゃん、今週末どこ行こうか?」


築田さんと遊びに行く約束をした覚えは……と考えを巡らせていると、愛斗さんとの電話の際にそんな流れになっていたのを思い出す。


あれ、でも……


『でも、今週末は部室で築田さんの誕生会ですよ?』


「それまでの時間でもいいから遊びに行きたいなーなんて。」


珍しく築田さんが押してくる。

心做しか、さっきよりも距離が段々近くなってきている気がする。


『じゃ、じゃあ映画行きましょう!』


私は立ち上がってそう答えた。


すると築田さんは嬉しそうにうん、いいね!と言うと待ち合わせ時間と場所を取り決めて


「楽しみだね」


そう笑って設計図作成に加わっていった。


築田はまさか本当に奈美と今週末出掛けられるとは思っていなかった。

愛斗を牽制するために出た口だけの嘘のはずだったがそれを利用させてもらった。

その後、設計図を書いていても1人だけ上機嫌であった。


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