心配よそにハイテンション
次の日、部室に着くなり木原さんが心配そうな顔で尋ねてきた。
「昨日なんで休んだの?大丈夫?」
達斗が事情を説明してくれていたものだと思っていたけど、彼なりに気を使って事情を話さなかったのだろうか。
『あ、すみません、実は…』
説明が終わるとすぐに達斗の方へ飛んでいった木原さん。
「昨日は災難だったね、」
築田さんが笑いながらそう言ってきた。
彼は昨日のうちに達斗から話を聞いていたらしい。
そうなら木原さんにも話せばよかったのに。
そう考える奈美であったが、昨日、築田が達斗から聞かされたのは、
「まじで……あそこで押し倒さなかった俺を褒めて欲しい」
との内容のこと。
話をした、というよりは奈美とのことについて相談したという方が正しかった。
最も木原に話をしなかったのは、問い詰められた挙句に頬にキスをしてしまったなど話すと何をされるかわからないからだ。
奈美は木原のものじゃないのに、そう思いながらも彼自身が彼女に想いを伝えることはないのだが。
『も〜!元はと言えば俊くんのせいだからね!』
「ごめんって〜」
別に全て俊くんが悪いという訳でもないのに私は話を振った。
まあ、事実、俊くんがお酒なんか持ってきたのが悪いんだから…ね?
そこに爽ちゃんが加わって、わちゃわちゃしているところに山浦さんが登場した。
「これ、なーんだ」
と、いつにもなく楽しそうな声で私にみせてきたのは…
『きゃああああ!!!え!それ!どうやって!!』
「奈美ちゃん、落ち着いて。笑」
私の大好きな某ギャルゲーのイベントのチケット3枚。
ご存知の通り、私と熊井さんと山浦さんはそれの熱狂的なファンで…
『もしかして、昨日言ってた渡したいものって…』
「そう、これ。」
『きゃあああ!!山浦さん大好きっ!!!』
私は嬉しすぎて勢いよく山浦さんに抱きついた。
「やーまじで、山浦さんサンキューな。」
「え、熊井さんにはタダであげるなんて言ってないけど?」
「えぇっ!?」
なんていつもの調子でちょっと意地悪を言う山浦さん。
私たち3人のテンションの高さは周りには理解できないご様子。
「さ、そろそろ離れましょうか、周りの目線が痛いです」
私は興奮して山浦さんに抱きついたままでいた。
お恥ずかしい。
「やったね!奈美ちゃん!」
『はいっ!』
そのまま熊井さんと手を繋いで小躍りを始める私。
先程まで何故か剣呑な雰囲気だった木原さんと達斗も今はこんな私たちを見て笑っている。
と、いうわけで3日後にイベントを控えた私は、鼻を歌っていたりスキップをしていたりとずっとハイテンションで可愛かった、とあとで築田さんが語る。




