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蛍は焦げる  作者: 愛璃
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花火と声

今日は先週から約束していた木原さんとの夏祭り。


約束は夕方からだと言うのに、私は午前中もドキドキして過ごしていた。


楽しみで仕方がなくて心が高鳴っているのだろう。


その結果、約束の時間の20分前に待ち合わせ場所であるお祭り会場の最寄り駅に到着。


お祭りというものは、治安が悪くなるのは当たり前のようで、偶然にも少しやんちゃそうな男の人たちに絡まれて困っている現状。


腕を掴まれた、


その先を見てみるとなんと私の腕を掴んでいるのは木原さん。


「すみません、連れが失礼しました」


と彼らに伝えると、私に走ってと小声で言った。


颯爽と駆けていく私たちを追いかけてくるものは誰もいない。


「ごめん、俺が遅れたばっかりに…」


謝ってくれる木原さんだけど、だいたいは早く来すぎてしまった私のせい。


「行こっか」


差し出された手を自然に掴み、私は歩き出す。


お祭りというものは、なんでも美味しそうに見せてしまうもので、わたあめ、かき氷、焼き鳥、クレープ、焼きとうもろこし、大福……甘いものが多いな、私の両手にはたくさんの食べ物を抱えられている。


座って食べようか、とさすがの木原さんでも苦笑いである。


少し落ち着いて、屋台を散策していると、(木原さんにはまだ食べる気なの?と言われた。そうじゃない、いや、結局りんご飴は買っちゃったけど)射的を見つけた。


私は射的は苦手だ。

だからスルーしようとしたけれど、なんと1番上に積まれていたものが私の大好きなシリーズのぬいぐるみ。


可愛くて、どうしようもなくて見ているとそれを見兼ねた木原さんが


「取ってあげる。」


とかって出てくれた。素敵。


1回のプレイで使える玉は6発。


一発、一発を地道に重ね、本当にたったの6発で目当てのぬいぐるみを取ってしまった。


「俺、実は射的得意なんだよね。はい、どうぞお姫様。」


なんて冗談を重ねていいながら渡してくれたそのぬいぐるみ。


私はそのあとずっとテンションが高かったと帰り際に木原さんから聞いた。




ドンッ



花火が上がり始めたみたいだ。

もっと近くに行きましょう!と私は手を差しだす。


先程、木原からとってもらったばかりのぬいぐるみを愛おしそうに抱えたまま夜空を見上げる奈美。

木原のことなど忘れてもうすでに花火の夢中となっている奈美を見て、




「好きだよ、」




と呟く木原の声は花火の音で掻き消された。


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