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蛍は焦げる  作者: 愛璃
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焦燥含めて

ついに大会当日。

いつもは寝起きの悪い私でさえ、目覚まし時計がなる前にぱっちりと目が覚めてしまうほど緊張しているのが分かる。


『おはようございます!』


朝早く大学前に集合して、大会会場へ向かった。


「今年はラッキーだよ、電車一本で行けるもん」


築田さんが去年は県外だったから大変だったんだよ〜と語る。


「ちょ、僕のチョコ勝手に食うなって!」


「え〜?いいじゃん別にー!」


爽ちゃんと俊くんがいつものようにじゃれているのを見て私に緊張は少し解れた。


大会会場に着くとそこであったのはつい最近名前を目にしたあの人達。


「奈美ちゃん〜!久しぶり〜!!!」


『もえきょん!!久しぶり!』


そう、遠山大学天文部の方々。


「ほんと、今回こそは優勝もらいますからね〜」


もえきょんと私が話していると愛斗さんが間に入ってきた。


3回連続優勝はさすがに阻止したいから今回は対策してきたのだよ、と笑いながら言う愛斗さん。


木原さんが興味を示した様子。


「作戦はこうだぁ…きっとおたくは奈美ちゃんを出してくる。昨年まではもっさい男ばかりだが今回は華がある。」


もっさい男ばかりばかりと言われて不満を垂らす木原さんたち。

それに対して、うるさぁい!と一言いって愛斗さんは続ける。


「だから!今年はプレゼンにもえきょんを出すことにしました!」


長々聞いたけれど結局は私たちと同じ状況になったということ。

今回はこの前の合宿メンバーでの挑戦らしい。


ーーまもなく、開演します。出場する選手の皆さんは指定された座席についてください。


会場のアナウンスが流れる。

私たちは互いの幸運を祈って先へ向かった。


開会式が始まり、今年の審査員が発表される。

どこかから流れてきた噂で囁かれていた通り、外国人の先生が1人いることに気がついた選手らの間でざわめきが広がる。


『あの、すみません、外国人の先生がいらっしゃることに不利な点などがあるのでしょうか…』


隣に座っている熊井さんに聞くと、プレゼン終了後の質問タイムが英語で行われる可能性があるということ、これがどう転ぶかわからないとのことだった。


奈美たちの思考通り、前の出番の大学のプレゼン終了後の質問タイムではその外国人の先生が積極的に質問を重ねており、それに口ごもってしまってステージ時間が終了するという流れが出来上がってしまっていた。

それにより、出番を控えている奈美たちを含め、他の大学の選手らが不安を覚え出す。


次は私たちのライバル校、遠山大学の出番がくる。

プレゼンでは、予想通り私たちと同じくペルセウス座流星群を題材に扱っており、素晴らしいものだった。


しかし、問題の質問タイムでは英語での質問に答えられないでいた。


その後、2校ほど発表があってから休憩時間に落とされた。

私たちの出番はその一発目だ。


『あの、質問には誰が答えてもいいんですよね?』


「そうだね、答えられる人がいたら積極的に答えてほしいな」


木原さんに一応の確認を取っておく。

ここで答えられたら他の大学との差もつくだろうということはここの誰もがわかっていた。


そしてブザーが鳴り、私たちはステージへと向かう。


私たちの紹介があった後に舞台へ出る。


舞台袖を見ると、プレゼンには参加しない爽ちゃんと、山浦さんと築田さんが頑張れという視線を送ってくれている気がした。


計画通り、無事にプレゼンは終了し、ついに決戦の質問タイムがやってきた。


「ペルセウス座流星群については遠山大学がすでに発表していましたが、それについてどう思われましたか?」


英語での質問に戸惑うメンバー、 私がマイクを取って答える。


その後も淡々と進んでいき、日本語での質問は他の人に任せて、英語での質問には私が答えた。


ステージ時間が終了し、本日初めて起こる盛大な拍手を頂いた。


私たちのあとも何校か発表があり、ついに緊張の結果発表の瞬間。

ーー優勝は、陵徳大学天文部


アナウンスがそう告げると、私たちはステージへと促された。


リーダーである木原さんが優勝カップと賞状を受け取ったあと、私たち一人一人にも賞状が手渡された。


「榊さん、あなたの受け答えは素晴らしかった!」


閉会式でのスピーチで私を褒めてくれたのはあの外国人の先生で、実は日本語がペラペラだということが判明し、会場にいた私たちが拍子抜けしたことはさらなり。


今年はもっとハードルをあげようと質問タイムの難易度を上げることが主旨だったらしい。


だからといって英語で質問とは…来年に向けての対策が必要だと改めて感じさせられた。


大会後、居酒屋での祝勝会で皆さんが私に言ったことは、


「奈美ちゃんが外国語学部なの忘れてた」


期待されすぎて力が発揮できなかった場合を考えると、これはこれで良かったのかな?


帰りは木原さんが送ってくれて、バイバイの代わりにとびっきりの笑顔で言われた言葉で私の心は高鳴った。


「明日、楽しみ」


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