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蛍は焦げる  作者: 愛璃
14/56

経歴映え

合宿が終わってから何日か経ってからのある日の部室。


「じゃあ合宿も終わったことですし、そろそろあの準備始めますか!」


さっきまでスマホを弄っていた木原さんが急に立ち上がりそう言った。


「今年遅くない?大丈夫?」


心配そうにそう言う山浦さん。


「大丈夫、大丈夫、去年もそう言って間に合ったし大丈夫っしょ」


そう余裕そうに言う木原さんに続いて、やりますか〜と伸びをする皆さん。


「ついにあの時期ですか!」


「僕、めっちゃ楽しみです!!」


やる気に満ち溢れてるのは爽ちゃんと俊くん。


そもそも、あの準備ってなんなんだろうか…わかっていないのはどうやら私だけのようだ。


『あの…皆さんなんのことをさっきから話してるんですか?』


私のその一言に一同が凍りつく。

爽ちゃんなんか口をパクパクさせて、


「え、なに、奈美ちゃんそんなことを知らずに天文部に入ったの…?」


ただ、誘われたから入った。

ただ、それだけ。


だから私はこの大学の天文部について詳しくはない。

もともと、部活とかサークルに入る予定じゃなかったし…。


「全国ミルキーウェイ争奪戦って調べてみ?」


熊井さんに言われた通り、自分のスマホで調べてみるとそこに1番大きく乗っていたのは前回大会優勝校とそのメンバーの名前。


第14回大会 優勝 陵徳大学

熊井琉唯(3)

築田蓮(3)

山浦達也(3)

木原達生(2)

山崎達斗(1)


『えぇぇぇえ!ここ、そんなに凄いとこだったんですか…?』


木原さんが少しドヤ顔で、


「ついでに前前大会の結果も見てみなよ」


そう言うからスクロールしてみると…


第13回大会 優勝 陵徳大学

熊井琉唯(2)

築田蓮(2)

山浦達也(2)

木原達生(1)


『えぇ、嘘でしょ…私、めっちゃ申し訳ないくらい適当な理由でここに入部してすみません…』


「いや、そんな謝らせるために見せたわけじゃないから笑」


木原さんは優しくそう言ってくれたけど、申し訳なさすぎる…


「ちなみに、準優勝校見るともっと面白いかもよ」


築田さんがそう言いながら私に画面を見せる。


第14回大会 準優勝 遠山大学

池田愛斗(3)

千賀椋(3)

渋谷もえ(2)

濱田陸(2)


第13回大会 準優勝 遠山大学

池田愛斗(2)

千賀椋(2)

渋谷もえ(1)

濱田陸(1)


『ええええ!』


私は再び大声を上げた。

私はこんなにもすごい人たちに囲まれて、先日まで一緒に過ごしていたのかと思うと感動する。


そんな私をお構い無しに今回のテーマを発表する木原さん。


もちろんメインはペルセウス座流星群について。


なかなか綺麗に観測することが出来なかったが、今回の合宿で奇跡的に観測できたから3回連続優勝には相応しい題材だっ!なんてドヤ顔をしている。


当たり前のようにテキパキと会議の準備を始める年上組。


私たち3人は一生懸命ついて行こうと思っても、今まで部活で培ってきた知識と技量が圧倒的に足りていない。


私なんか、資料集めで指定された本を図書館から借りてくるだけ。


築田さんはこれが絶対奈美ちゃんに適してるからとは言われたけど…正直ちょっと納得いかない。


私もみんなと同じくらい動けたらいいのに、そう考えながら本のラベルを探った。


その日の夕食は皆でファミレスで食べることになった。


私はいつも絶対にグラタンを食べている。もちろん、今日も。


「奈美ちゃん、それほんと好きだよね〜!」


熊井さんがそう言って笑う。


私と熊井さんはよくオタクトークをするためにファミレスにこもりがちだからお互いに好きな物を把握している。


その時、奈美の視界に入ったのは、ものつまらなそうな木原の顔。

熊井が奈美のことを知っている風でずるい、そう考えてずっとモヤモヤしたままの顔を表に出してしまっていた。


部室に帰るともちろん準備の続き。

とりあえず粗方のまとめ方なんかはもう既に決まっている。


そろそろ解散します?という山浦さんの一声で各自帰る支度を始めた。


帰りは木原さんが送ってくれるらしく、皆さんと別れたあとは2人で並んで歩くことになった。


いつにもなく しん、としていて少し寂しい。

かと言って、自分から話題を振れるほどの肝も座っていない。


「あのさ、大会の次の日の夏祭り一緒に行かない?」


静寂を破った木原さんの言葉に私は直ぐにうなづいた。


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