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漫才

漫才 おもてなし

作者: をち武者

ボケ「最近、観光客の方が多いですね」


ツッコミ「そうですね、凄く増えてますね」


ボケ「この機会に日本の心も知って貰えると嬉しいですね」


ツッコミ「ほう、それって具体的にはどんな感じですか」


ボケ「わび・さびですね。それに勿体無い何てのもありますし、最近だとオモテナシですか」


ツッコミ「なるほど、じゃあそれ僕に見せて下さいよ」


ボケ「分かりました。じゃあ私が女将やりますので、あなたは客でお願いします」


ツッコミ「分かりました。えー、コンニチハー」


ボケ「あらいらっしゃい、ここはお前には勿体無いぐらいのいい宿ですよ~」


ツッコミ「ええ、ちょっと待って下さい。勿体無いの使い方間違えてません?」


ボケ「どうせ日本語通じてないから大丈夫でしょ」


ツッコミ「いや、通じてたらどうするんですか」


ボケ「スリッパをどうぞ~。お前ら野蛮人は直ぐに土足で上がろうとするから掃除が面倒なんです~」


ツッコミ「口が悪いですねぇ、この女将さん。オモテナシの心はどこへ行ったんですか」


ボケ「やってますやってます。では、ここがお前の隔離部屋です~」


ツッコミ「またひどい言い方を」


ボケ「ああ、間違えた。座敷牢です~」


ツッコミ「間違えたままですよー、よりによって座敷牢って。ああ、でも割といい部屋じゃないですか」


ボケ「はい、その分、お代はしっかり頂きますけど」


ツッコミ「ちょっと、余計な事言わないで下さい。それはそうでしょうけど」


ボケ「じゃあさっさと帰って貰いたいのでお食事です~」


ツッコミ「口が悪いなぁ……。ああ、でも豪勢じゃないですか。天ぷらにお刺身、お寿司までありますね」


ボケ「その分、料金の方にドンドンっと上乗せして」


ツッコミ「それは言わなくていいです! じゃあ着いた所ですけどせっかくなので頂きましょうか。……もぐもぐ、ん! これは鼻にツーンと来まね。ワサビが……ちょっと入れすぎじゃないですか?」


ボケ「これがワサビの心です」


ツッコミ「いや、違いますよ。ここは詫び寂びって言う所ですよね、まぁそれも間違ってますけど」


ボケ「食べる物食べたらさっさと寝やがれって下さい。カッチカチの布団が用意してあります~」


ツッコミ「うわ、ほんとにカッチカチじゃないですか。何ですかこれ」


ボケ「詫び寂びの心を味わって貰おうと思いまして」


ツッコミ「どういう事ですか」


ボケ「こんな異国の座敷牢に閉じ込められて、固い布団の上で侘しい・寂しい気持ちをたっぷり堪能して貰おうと思いまして」


ツッコミ「やめて下さい、それが詫び寂びですか? もてなす気ゼロじゃないですか。それにこの部屋って座敷牢と言うほどひどくないでしょう」


ボケ「今はね」


ツッコミ「今はって、昔は何だったんですか」


ボケ「だから言ったでしょう、座敷牢です。20年間閉じ込めてました」


ツッコミ「え、急にホラーな展開に。ちなみに誰が?」


ボケ「引きこもりの兄です」


ツッコミ「それ自ら閉じ篭ってましたよね? それに座敷牢って、お兄さんの扱いひどいなー。ちなみにそのお兄さんはどうなりました?」


ボケ「ネットビジネスで一山当ててベトナムのホテルに閉じ篭ってます。一歩も外に出てないみたいですね」


ツッコミ「それは……良かったのか悪かったのか判断に困る話ですね」


ボケ「悪かったですよ……」


ツッコミ「お兄さんに何かありました?」


ボケ「お陰で私がこんな旅館を継がないといけなくなったんです!」


ツッコミ「こんなって、もう少し言い方があるでしょうに」


ボケ「私はこんな田舎で一生を終えるような女じゃないのー!」


ツッコミ「女将さんからこんな話聞きたくないー!」


ボケ「都会でスポットライトを浴びてブイブイ言わせるのー!」


ツッコミ「女将さん、バブル期の方ですかー!?」


ボケ「どうして私がこんなチンケな旅館を毎日切り盛りしないといけないのー!」


ツッコミ「もう僕だったら逃げ帰りますよこんな宿」


ボケ「大丈夫、どうせ言葉通じてないから」


ツッコミ「だからそれは分かりま──」


ボケ「ファーック!」


ツッコミ「ちょっとちょっと、いきなり通じる言葉使わないで」


ボケ「シーッツ!」


ツッコミ「汚い言葉ですよー!」


ボケ「ロッケンロール!」


ツッコミ「ええ、急に歌うんですか? 中々いいシャウトでしたけど……ってそんな泣きそうな顔しないで」


ボケ「兄がこの旅館を継いでくれたらこんな客の相手しなくても済んだのに……」


ツッコミ「やめてー! 泣きながらそんな事言われたらさすがに笑えませんよー!」


ボケ「シクシク……」


ツッコミ「いや、あの大丈夫ですか? ってどうして僕が慰めないといけないんですか。ちょっとはもてなして下さいよ」


ボケ「何もかも包み隠さず。これがオモテナシの心です」


ツッコミ「どこがオモテナシなんですか」


ボケ「全てを晒す、建前のない心です」


ツッコミ「え、どういう事ですか?」


ボケ「表がなくて裏しかない、表なしの心です」


ツッコミ「もてなす気ゼロじゃないですか、いい加減にしなさい」

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