「生物造形の鬼現る」
4「生物造形の鬼現る」
手始めに、怪獣のフィギュアの型を取ると
其れは、元来、買わなければいけなかったパーツが
寸分狂わず、そこにはあった
其れは、自分で、粘土を、こねて造形を作っても
其れは、一つだけのであり
コピーすることなど考えもしなかった
いや、出来たとしても、かなり難しくまた高価であった
しかし、今目の前にあるのは
彼らは、一週間をかけ
あらゆるフィギュアを片っ端から、型にはめて制作し
其れを組んだ
その結果、製品と大差ない物が完成した
元来動かさないフィギュアという物は
その中身がどうであれ
問題は、その外見である
其れが全てであり
見える物こそが重要なのだ
そう言う意味で、宮内は、販売に乗り出したのであった
基本的に、店に出す以外では、
映画館の出口などで売ったが
その業績は、中々のもので
日に、十万円も、行く日が、何度か有った
しかし、宮内は、思う
これで良いのか
もっと面白いもの
今ある物ではなく、全く違う
思い描いた製品がほしい
しかし、精度がいい戦車を作ってみたものの
やはり、製品と比べ、制度が、五分であり
自分で作ったものの材料費を考えると
売りに出すのはためらわれた
独自の兵器を開発しようと提案したが
笹木は、リアリティーの一択であり
白い細腕に、迷彩柄のペイントが汚れる腕を突き上げて反対の意志をしめした
仕方なく笹木とは別行動を起こすことにした
良そうな場所としては、美術部の彫刻何かを専攻している奴だろう
宮内は、堂々とはいると
黒板に立ち宣言した
「造形の波が来る」と
しかし、あっさりと追い出され
何とか、自分で作った戦車を、渡すも
あっさりと返されてしまった
仕方なく部に帰ると
ブルーシートが被してある
目立つ机に、見知らぬ後ろ姿があった
そこには、肉の塊とおもしき巨大な影
その姿には見覚えがあった
野球部の一年である
「何してるんだ」
「あ、部長」
部長と呼ばれる覚えはないが
その巨体は、手に持った何かをつきだしてきた
「なんだ其れは」
其れは、茶色い油粘土であったが
其れは、毛並みが分かるほどリアルであり
骨格があるようなしっかりさ
内蔵の動きがあるような体の付き方
茶色い小さな兎が居た
「これ、売れませんか」
宮内は、その兎を見て考えもせずにこう言った
「良し、型を取ろう」
かくして、その後高校を出て会社を立ち上げた
彼らの前に立ちはだかったのは
巨大会社ではなく
隣町の高校人形連盟可動部だとはまだ誰も知らないが
其れはまた別の話である