その7〜人の話を聞きなさい〜
評価を頂きました!めちゃんくちゃん嬉しいです!
うおおおおおおおお!
「はぁ〜いい朝だ」
リッカは大きく伸びをした。魔法使いの帽子もマントもつけていないため、見た目は普通の少年だ。
リッカがいるのは教会脇の庭。植木の向こうに見える寮の壁が白く輝いている。
村の朝は早い。
朝の5時にも関わらず、辺りからは人々の活動の音が聞こえてくる。
「あの2人、起こしに行った方がいいかな…。いや、まだ後でいいか」
リッカ少年自身は、2人を起こさないことについて、「昨日はあれだけの戦闘を行ったばかりだし、もう少し休ませてあげるのだ」という理由をつけた。が、彼の本能が無意識に2人を起こすことを避けさせていることに気がついていない。
「やあ、おはよう!いい朝だな」
「おはようございます、リカさん」
背後から声をかけられた。
だんだんと耳に馴染んできた2人の声。
リッカは脊髄反射的にその場から逃げ出そうとしたが、教会専属魔法使いの誇りが、その足を止めさせた。
仕方なく返事をする。
「僕の名前はリッカ…。2人とも、もう起きたんだね、ってうわっ!」
振り返ると、そこにはシャッキリと目を覚ました状態の武藤兄妹が立っていた。
しかし、信じられないほどビッショビショである。
「何⁈君達、滝行でもしてた訳⁈」
「いや、ただトレーニングをしていただけだ」
「森を使いたかったのですが、迷うと困るので。路上を使いました」
「汗?それ全部汗?ごめん近づいて来ようとしないでお兄さん」
しかも路上トレーニングとは、結構な迷惑行為である。だが彼らは一応は村を救った勇者。店の支度をしていた人々は珍妙な行動をとる兄妹を、温かく見守ってくれたのだった。
「パンや飲み物ももらった。おいしかった」
「お腹が空きました。朝食はいつですか?」
「シュウちゃん、今君のお兄さんがすでに君達が朝食を終えたという証言をしてくれたんだが」
「確かに俺も腹が減った。食堂はどこだ」
「今日も変わらず話を聞かないね。まずは汗を流しておいで」
「分かりました。私達は先に食堂に行っていますね」
「やっぱり君も話を聞かないんだね。泣きそう」
話を聞かないくせに、兄妹は人の良さそうな笑みを絶えず浮かべている。(そしてリッカの言葉を無視する)
そうしているだけなら、彼らは大層絵になった。
元が美形な彼らである。この村の特産品である美しい衣服を着ると、さらに輝いて見えた。
召喚された時に兄妹が着ていた道着は、既に処分されている。ゴブリンの血液には毒性があるため、脱がざるを得なかったのだ。
の割に、その血液を頭から被りまくっていた兄妹が無事なのは何故か。お肌はツヤツヤのままだった。
「せっかく新しい服を用意してもらったのに。乾きやすい服を探してもらうよ」
「わーい、ご飯ですー」
「もしかして耳が悪かったりする?」
結局兄妹は汗を流しに小川へ向かった。
話を聞いているのかいないのか。
「そういえば、今日村の方が『聖剣』という言葉を口にしているのを聞いたのですが、何のことなのですか?」
幸せそうにパンケーキを食みながら、シュウが尋ねた。朝食の時間。食堂は人で溢れている。獅子峠たちの姿は見えなかった。
リッカは食事をする手を止め、シュウを挟んだ向こう側に座るケンに声を掛ける。
「丁度昨日ケンには話したところだよね」
「知らん」
「即答だけど何の話かすらも分かってないよね君」
リッカは諦め、一から説明を始める。
「『聖剣』っていうのは、村の外れの丘にある伝説の剣のことだよ。大きな岩に刺さっていて、今まで誰も抜いたことがないんだ」
「何故ですか?ぬるぬるしてるからですか?」
「どうすればそんな発想に至るわけよ。魔法がかかってるんだ」
「ぬるぬるになる魔法か」
「ちげーよ。選ばれし者にしか抜けないの。優しい心、溢れる知力、確かな強さを併せ持つ勇者だけが、その剣を使う権利を与えられる」
この世界に存在する『聖剣』は一本ではない。あらゆる種類の『聖剣』が各地に散らばっており、それぞれの地域で同じような伝承が語り継がれている。
既に抜かれた剣もあれば、リッカの村にある『聖剣』のように、封印されたままの剣もあるのだ。
「僕たちが見守っている『聖剣』は、『聖魔法』を司る剣。まさに『聖剣』って訳だよ」
「今日は予定もないし、抜きに行くか」
「そうだ、説明し忘れてたけど、この世界には『魔法』というものが存在していてね、色々な系統に分類されているんだ」
「そうですね、どこにあるんでしょうか」
「例えば僕が使う魔法は『水魔法』。名前の通り、水系統の魔法が使えるんだ。水を操るのはもちろん、回復魔法も同じ系統に入ってるよ」
「道案内を頼みたい」
「やっぱりそうなるよね分かってた」
3、3。
無難なところですが、十分嬉しいです!
ありがとうございます!!