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異世界駆ける武闘派兄妹〜人の話聞かん〜  作者: はなまるドクメンタ
6/20

その6〜人の話を聞くんじゃ〜

夏休みがもう終わってしまいますね…

もうどっちが悪役か分からなくなっていた。


兄妹の圧倒的な戦いぶりに、リッカも、獅子峠一行も、逃げ遅れた村人も、身動きが取れなくなっていた。


殴る、蹴る、叩く、突く、投げる。


身体中のあらゆる部位を使って、彼らはゴブリンをなぎ倒していく。完璧に合理化された動きは、まるで踊っているかのようだ。


ほとんどのモンスターには痛覚というものがない。

何度もその体に攻撃を叩き込まれつつも、ゴブリンは何度も兄妹に向かっていく。


それをひたすら撃退する2人。


だんだんとゴブリン側の体力が尽きていく。骨を折られるなどして動けなくなったゴブリンも少なくない。


「まさか…こんなに強いなんて…」


リッカは呆然として呟く。

しかも彼ら兄妹は汗ひとつかいていない。

シュウなどは空腹に目が虚ろになりながらも、驚異的な速度で蹴り技を繰り出している。


とうとう残るゴブリンは1匹となった。

兄妹は勢いに任せるように、同時にゴブリンへ突進していく。

今更身の危険に気がついたのか、ラストゴブリンは踵を返す。返そうとする、が、間に合わない。


ケンの足裏と、シュウの拳が、ゴブリンの腹に叩き込まれた。


「え?逆じゃないのそれ」


リッカの疑問に答えるものはいない。

倒れ込んだゴブリンを前に、兄妹は揃って、勝利の雄叫びを上げた。


「なんてことだ…勇者様…」


呻きながらにリッカの側へ這いよって来たのは、ボロボロになった黒服を身に纏う老人。


「神父様!大丈夫ですか⁈どこか酷いところはありますか」

「いや、軽く振り回されただけだ。聖魔法を使って撃退しようと思ったが、私では力不足だった…」


悲しそうに目を伏せる神父。リッカは首を振って否定する。


「神父様が体を張って時間を稼いでくれたから、勇者様が間に合ったんです」

「ああ…ここを救ってくれたのは勇者様だ…。あの方々ならきっと…」

「誰だお前は」

「すごいタイミングでひでえこと聞くなお前!」

「夜ご飯はいつですか…」

「聞け!」


村人を救っても、彼らは彼らだった。

しかし、飢餓の極致に達しようとしていたシュウは、それでも神父の異変に気がついた。


「あら神父様!お怪我をされたのですか!私が運びましょう。さあ、背中に」


お手柔らかに…、と息も絶え絶えな神父の訴えが聞こえたのかどうか、老人を背負った少女は超特急で教会の方へ向かっていった。


「さっきの老人、俺たちのことを何か言っていたようだが、なんの話をしていたんだ?」

「ああ、多分、『聖剣』のことを言ったんだと思う。選ばれた勇者にしか抜けないんだ」

「流石にこの量のごぶりんは1人では無理だ。運ぶのを手伝ってくれ」

「聞いといて無視されるのが一番傷つくなこれ」


面倒くさいやつが残ったと思いながらも、リッカは手頃な押し車を探す。

ケンはゴブリンを5、6匹背負うと、シュウと同じくらいの速度でいそいそと走り去っていった。


「はぁ…、担当、変わってもらえないかな。多少弱くたって、話が通じる勇者様のナビゲートの方が楽しいよ、絶対」


誰にともなく流したリッカの独り言に、答える声があった。


「それなら、俺達の仲間になるといい」


獅子峠レオである。まだ倒れたままであった。見た目は完全に、ひっくり返って立てなくなった亀である。


「最初の仕事を与えよう。さぁ、俺を起こしてくれ」


爽やかな笑顔を浮かべるレオから、リッカはゆっくりと目をそらす。


「さて、そろそろご飯の時間だし、帰るか」

感想、アドバイスどんどんください!

作者が泣いて喜びます!

喜びすぎてシュウが脱ぎます!

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