その3〜人の話を聞け〜
初めてブックマーク来ました!
感謝!
うおおおおおおおおおおおおおお!
「これはこれは勇者様方!ようこそ異世界へおいでくださいました!どうか我々をお助けくださいませ!」
「誰だお前は」
「この教会の神父でございます!」
「そうか、これを差し上げよう。とれたてのスライムだ」
教会にたどり着いた3人は、ステンドグラスの前で祈りを捧げる神父に出会った。リッカの紹介で、互いに名乗る。
「これからちょうど夕食でございます。リッカ、勇者様方を食堂へ案内しなさい」
「分かりました神父様」
神父はもう少しの間祈りを続けるらしい。3人は教壇脇の扉から教会の広間を抜けた。
木造りの廊下をしばらく歩いていると、やがて人々の話し声が聞こえてきた。
「まあ、素敵な食堂ですね」
シュウが思わず声を上げる。
大机が何個も連なり、大量の椅子が置かれている。そのほとんどがすでに埋まっているが、座っているのは修道女や神父、魔法使いばかりである。
兄妹の姿を見とめるやいなや、彼らが一斉に拍手を送った。召喚された勇者を祝福しているのだ。
3人が席に着くと、リッカは食事を取りに行くため立ち上がった。
リッカの帰りを待っていると、兄妹のそばに男たちが寄ってきた。
「君達も召喚されたのかい?俺たちもさ、仲良くやろう」
リーダー格らしい、黒髪の男が話しかけた。
顔つきは明らかに日本人である。他の男達のなかにも、黒髪が数人混じっていた。
「誰だお前は」
「獅子峠レオだ。よろしく」
他のメンバーもそれぞれ自己紹介をする。
シュウが手を差し出していう。
「武藤蹴です。よろしくお願いします」
レオも片手を差し出す。高そうな鎧を着ていた。いかにも勇者と言った風情である。
2人は握手をするが、すぐにレオが顔をしかめた。
「あ…ちょっと、もう離してくれないかな?ねえ、シュウちゃん、ちょっと待っ痛い痛い痛い」
身を仰け反らせるレオに驚き、シュウは慌てて手を離す。
「ごめんなさい!鎧を着てるから大丈夫かと…。すみません、私、握力が少し強いんです」
鉄製の鎧を歪ませるほどの握力を、「少し強い」とは言わない。
レオと仲間たちは衝撃に顔を青くし、後ずさる。
ケンも手を差し出した。
「同じくケンだ。よろしく」
「ああ、よろしく、じゃあ、俺たち机向こうだから!」
逃げる様に去っていく獅子峠一行。
ケンは行き場をなくした右手を彷徨わせる。
「良かった!勝手にどっか行かないか心配だったけど、待ってることだけなら流石に出来たんだね!」
結構失礼なことを言いながらリッカが戻ってきた。
両手で大きなお盆を抱えている。そこに乗っているのは3人分のパンと牛乳だった。
「まずはこれだけ机に置いて祈りを捧げて、それから主菜に移るんだよ。たくさん食べられるから、安心して」
リッカが食べ物を配ったところで、年配のシスターが食堂の奥で鐘を鳴らした。
「それでは祈りを始めます!」
戸惑う兄妹に、リッカは祈りのレクチャーをしようとするが、それはすぐに遮られた。
後方の、教会に繋がる廊下から何者かが飛び込んできた。全員が一斉にそちらを見ると、一人の村人が肩で息をしていた。
村人は必死に叫ぶ。
「ゴブリンが侵入してきた!みんな逃げろ!」
食堂に訪れた静寂の中で、立ち上がったリッカの声が響く。
「神父様はどこに⁈」
兄妹は呟く。
「「ごぶりん?何それ食えるの?」」
ポイントが!
ポイントが2になってる!
うおおおおおおおおおおおおおお!