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異世界駆ける武闘派兄妹〜人の話聞かん〜  作者: はなまるドクメンタ
20/20

その20〜人の話を聞いとけ〜

また少しずつ書いていきたいです

「腹が減った!」


ケンは飛び上がるようにして起床した。

日が暮れて少しし、町全体に夜の空気が流れてきた頃である。


「何か食べよう!今は夜か?なら夕飯だな!むむ?何やら木目調の床板の隙間から美味しそうな香りが漂ってくるな!よし行こう!」

「待って待ってテンポ早すぎ」


オンオフの差が激しすぎる。

ケンは上裸のままさっさと部屋から出て行こうとし、リッカはそれを必死で止める。変態認定されかねん。というか君まだ病人。

ていうか寝起きのテンションでそれってすごいな。


「おや?りっちゃんじゃないか、おはよう。そういえば、ここはどこだ?」

「僕の存在に今気づいたの?ということは、さっきの全部独り言だったの?」


それでも顔は覚えてもらえたらしい。何だか嬉しくなってしまうリッカである。


「というか、現状把握より先に食事の確保を優先するって流石だよね」


リッカは何とかケンを寝台に戻すと、座ったケンの脇腹を確認する。傷はうまくかさぶたになっていた。毒の影響も特にないらしい。マジで化け物。


「そうだ!あの少年はどこに行ったんだ?」

「仕事だってさ。少し前に別れちゃったよ」


それを聞くとケンは、大変悲しそうな顔を見せた。本当に心躍る戦いだったのだろう。反則負けだったけれど。


「怪我は良さそうだね。それじゃ、シュウも読んで夜ご飯にしようか」


シュウはもう一つ貸りた隣の部屋で待機していた。時折風を切るような鋭い音が聞こえていたので、おそらく修行でもしていたのだろう。


そんなこんなで。


「「ごっはんー♪ごっはんー♪よーるごっはんー♪」」


可愛らしい歌であるが、その方翼を担っているのはゴツい武闘家である。リッカは努めてシュウに焦点を合わせ、疲れ切った心を癒していた。


「お、兄ちゃん復活したか!毒ナイフで刺されたって、大丈夫なのか?」

「俺はいつでも健康だ!」


豪快な返事に酒場は沸き、特に盛り上がりを見せるテーブルの男達が3人のために場所を開けてくれた。


「良いもん見せて貰ったからな、ほら、奢るから好きなだけ食え!」


すでに酔っ払って顔を赤くした男が叫んだ。

リッカは顔を強張らせる。何てことを言ってしまったんだ…。


村でも森でも嫌というほど兄妹の食いっぷりを見てきたリッカである。彼らの消費量をお金に換算するなど、想像しただけで鳥肌が立つ。


(だけど奢ってくれるならありがたい。ごめんなさいおじさん、そしてありがとう!ご馳走になります!)


小柄と言えどもリッカも成長期。兄妹程でなくとも十分食べ盛りなのだ。今日は一仕事出来た訳だし、豪遊してしまおう。


「兄ちゃん本当いい体してるな!ウチで働かねぇか?」

「ああ!俺もこの肉料理をおかわりだ!」


「嬢ちゃんも強いのか?どうよ、腕相撲で勝負!」

「いえいえ、まだまだ食べられますよ!」


にこやかに応対していると思いきや、人々の言葉をことごとく無視していく兄妹。もうその瞳には食べ物しか写っていないのだろう。しかしそんな2人の態度にも構わず、人々は笑い、歌い、酒を飲み続けた。


「明日、出るんだよね?」


声をかけられ、リッカは振り向く。豊満な…いやいやいや、受付嬢のお姉さんが水の入ったボトルを片手に立っていた。水を注いでもらいながらリッカは肯定する。


「そしたら、出られる前に地図を買って行ったほうが良いよ。最近モンスターが頻発に出てくるようになったらしくて、封鎖された道も結構あるから」


そう言ってエプロンの間に挟まれた紙切れを渡してくるお姉さん。


「そこに行けば旅の装備なんかもお得に買えるのよ」

「え、ありがとうございます…けど、何でここまで」


戸惑ってリッカが言うと、お姉さんは突然緑色の目を輝かせた。


「お兄さんの闘い、とても格好良かったぁ!これまで沢山の勇者候補の方々を見送ってきたけど、ケンさんだっけ?あの人はなんかこう…オーラから違うと言うか!」


嬉々として語り始めるお姉さん。リッカはとても複雑な気持ちになりました。別に、ちょっと可愛い人だなって思ってただけだし?それだけだし?話しかけてきた時だって「え?もしかしてデートのお誘い?」だなんて思ってないし?


「ていうかあの兄妹やたらとモテるのな…」

「え?」

「いや。何でもないです。多分顔だけですあいつら」

「ふぅん…?そうだ、それで、是非良ければ、応援させてね。それと、このことは店長には秘密ですよ?」


小悪魔っぽいウィンクと共に立ち去るお姉さん。

波打つ金髪が酒臭いオヤジの人混みに消えて行った。

リッカは注いでもらったばかりの水に、テーブルに乗っていた酒瓶の中身を少し垂らす。


「今夜はヤケ酒だ!」

「りっくんも今日は何やら応援してくれてたみたいだなありがとう!!」


ケンに背中を叩かれた。コップは手から吹っ飛んだ。リッカは顔面からテーブルに突っ伏した。肺の空気全部持っていかれた。何かもうどうでも良くなってきた。


「りっくんって仇名っぽいからまだマシだよね…」


少年の呟きは誰にも届かない。

感想、アドバイスなど是非お願いします!

うれしすぎて逆立ちします!

うれしすぎてケンが脱ぎます!

結構脱ぎがちですけど!

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