その12〜人の話を聞いてくれ〜
やっと出発です。
勇者っぽくなってきました!
聖剣も抜きましたし!
「神父さま。そろそろ2人も都へ向かっても良い時期だと思います。許可を頂けませんか?」
教壇の脇に立つ神父は、静かに目を伏せる。
「いいよ」
「いいの⁈」
あっさり許可をもらえた。やったね!
*
「準備は出来たぞ!早く出発しよう!」
元気な声でケンが叫ぶ。手ぶら。
「準備は出来ました!早く出発しましょう!」
同じく元気にシュウが叫ぶ。手ぶら。
「散歩じゃないんだよ。一週間歩き続けてやっと着くぐらいの距離だよ」
どう考えても手ぶらでたどり着けるような場所じゃない。早速リッカは旅先に不安を覚える。
「徒歩で一週間ということは、走れば1日だ!」
「どういう計算だよ」
仕方ないので、地図やお金などの物品はリッカが準備することになった。
兄妹は旅に必要な荷物でいっぱいの鞄をそれぞれ背負い。
リッカは村人達に別れの挨拶をし。
神父は祈りの言葉を3人に捧げ。
新たな勇者の一行が村を出たのである。
ものすごい急展開だが、まずは旅路を確認しなければならない。
「ここが僕達がいた村」
「端っこだな」
リッカは地図の右下を指差す。
地図の中央には大きな円が描かれている。美しく整備されたそれは、都の周りにある堀を表している。
目的地はそこだ。
大陸はいくつかの地域に分かれており、緑色に塗られた一角がリッカ達のいる森林地帯『フォレスタ』なのである。ネーミングはまんまなのである。
「こっから真ん中にひたすら進んでいきたいところなんだけど、それだと巨大な山脈に邪魔されるから、ぐるっと回って行く」
右下から左に向かい、山々を大きく迂回する形で中央まで指を運ぶ。
「しばらくは森が続く。植物系のモンスターが多いから、食料には困らないと思うけど…。とりあえず、迷わないようにするのが大切だね」
シュウの背負う荷物には、長持ちする保存食が大量に入っている。しばらくはこれと、森の中の木の実やあるいはモンスター何とか腹を満たせるだろう。
しばらく歩いたところに大きめの街があるので、そこまでを第1段階とする。
「最初の目的地は、木材都市『ランバーヤード』!」
リッカは声高に目的地を宣言する。
その隣でシュウが不思議そうな顔をした。
「そういえば、この前までいた村の名前を知りません。何というんですか?」
「…『始まりの村』」
ベタだよねー。
ポイント評価を頂きました。
とても励みになります、ありがとうございます!