その1〜人の話を聞こう〜
完全なる素人が書いた小説です。
つじつまが合わなかったり文脈カオスになったりと、色々下手なので、しっかりしたものじゃないと読みたくないなという方には、オススメしません…。
ですが、面白いと思ってもらえるような作品を作りたいので、感想、意見などありましたらどんどんお願いします。
作者は人の話は聞きます!
今は現代、武闘派を地で行く兄妹がいた。
健康かつ逞しい生き様を貫く彼らは、ある日とんでもない出来事に巻き込まれ、死んだ…。
しかしながら天界は彼らのその素晴らしい武勲を称え、武闘派兄妹を異世界へ転生させることにした。
勇者が走り、魔王が笑い、姫君が攫われ竜が舞い聖剣が抜けない異世界へ!
戦いを愛し戦いに愛された兄妹は、異世界を愛し異世界に愛されるはずだったのだがしかし。
兄妹の強力さは、天界にとって少々誤算であった…。
語りを務めるは、物語を神の視点から見下ろす謎の傍観者である。つまりこれは三人称視点の小説なのである。後々ブレてくるかも知れないのである。
突然だが、物語は森の中から始まる。
眩い光とともにそこそこの高い位置から落とされた一組の男女は、余裕の姿勢で受け身を取った。
着地した勢いをそのままに前転し、素早く背中合わせのフォーメーションを取る。幼い頃から互いに自らの命を預けてきた彼らは、動揺の中でも血を分けた兄妹を信頼することを忘れない。
「ここはどこだ妹」
「森ですね兄上」
「敵は無いな妹」
「そのようです兄上」
まるで「妹」「兄上」が語尾であるかのように会話をする二人。
揃いの道着を着、裸足である。真っ黒な髪と瞳は、彼らが純粋な日本人であることを物語っていた。
兄は凛々しい顔に柔らかい髪。妹は可愛らしい顔に長いポニーテール。頭二つ分ほど身長は違えど、その戦闘力はほぼ同等である。
真っ先に周囲の敵の有無を確認した彼らは、半径50メートル以内にある人間の気配を感じとることが出来る。
「しかし小動物らしき気配を感じる妹」
「一時の方向40メートルほど先に兄上」
文章が軽く分かりにくくなっている喋り方をする彼らは、やがて警戒態勢を解き(しかし臨戦態勢は解かない)、妹の指摘した草むらへ向かう。先を行く兄が足を止めて、しゃがみこんだ。
「見てみろ妹」
「何ですかそれは兄上」
兄妹の視線の先には、たしかに小動物が。
しかし、全くもって小動物らしくない。
小さな動物と言う意味ではそれは小さな動物なのだろうが、小動物かと聴かれれば返答に窮する。
高さ30センチほどの楕円形。ゼリーのような水色の塊である。突如現れた二人組に驚き、ぷるぷると震えている。
皆さんもうお気づきかもしれないが、スライムだ。
しかし、それまでの人生をただひたすら技を磨くことに専念し続けてきた兄妹に、そんなことは分かりはしない。
ゲーム機を握れば握力で即座に押しつぶす彼らである。デジタルゲームになど馴染みはない。ちなみに彼らはテレビも見ない。
「妹、何やら震えているぞ。命あるもののようだが、これは一体何という生き物だろうか」
「兄上、私には分かりかねます。おそらく、この森は私達の生まれ育った土地とは異なる生態系を持っているのでしょう」
異なる生態系の生き物として納得してしまう豪胆さを彼女は持っている。
「なるほど妹、日本には色々な生き物がいるのだな」
兄も同様である。
スライムの戦闘意欲はとっくに失せており、それに気がついている兄妹はさらに観察を続けた。
顔や臓器の有無などを確認した後、とうとう兄がその半透明の胴体に触れた。
「おお!妹!」
驚いた時にも語尾は忘れない。
「すごいぞこれは!柔らかいながらもしっかりとした弾力を持ち、押した手をそのまま押し返してくる力強さがある」
瞳を輝かせながらなおもぷにぷにとスライムを弄び続ける兄。
「なんだかとっても…打撃を与えたいぞ!」
なんだかすごいことを言い出した。
先程から兄の挑戦を遠目に見ていた妹も、期待に胸を膨らませながらスライムに触れる。
「まぁ!兄上!」
そろそろ疲れてきそうなものだが、この先も続けるのだろうか。この謎語尾。
「私もです…打撃を与えたいです!」
意気投合した兄妹。スライムは危険を察知し、さらにぷるぷる震える。脂汗さえ出ているようだった。
そして天はスライムに微笑んだ。
「しかし動物である以上、痛めつけるような真似はしたくない。今日のところは諦めよう」
最後の一言が気になるが、兄の決断により少なくともこのスライムは、九死に一生を得た。ぷるぷるも心なしか収まったようである。
「そうですね…残念です」
心から落ち込んだような顔をする妹。
そして今気がついたが、語尾がさりげに無くなっている。彼らも彼らで面倒になったのか。はたまた作者が面倒になったのか。おそらく後者。
「それではそろそろ戻りましょうか。今ならまだ日没に間に合うでしょう」
そう言って立ち上がった妹は、後ろを振り返り顔を曇らせた。
「どうした?」
こちらもこちらで名残惜しそうに去っていくスライムを見つめていた兄は、挙動不審な様子を見せる妹に気づいた。妹は今度は正面の茂みを見つめている。
「兄上、私達は…どちらから来たのでしたっけ」
前か後ろか、右か左かの問題ではもはや無い。
彼らは異世界転生を果たしたのである。帰る方法などない。しかし、兄妹はまだその前提にすら気づいていない。混乱の極みである。
「!」
突然兄が振り返る。
「人だ。走ってくるぞ。敵意は今のところ無いが、気をつけろ」
野生の感は兄の方が鋭いのだ。一片の疑いもなく、妹はすぐに顔を引き締める。
「了解です」
スライムが去って行った方向の丁度真反対である。木々の間を走る音が段々と大きくなって来た。
やがて兄妹の目の前の枝が書き分けられ、先程まで兄妹がスライムと戯れていたスペースに何者かが飛び込んで来た。闖入者は叫ぶ。
「ここにいた!何でこんなに行動力があるんだよ君達!」
少年だった。駆け出し勇者のナビゲートを務めそうな魔法使いっぽいかっこうをしている。
頭にかぶる三角帽子などはいかにもといった美しさだが、三角帽子とお揃いのマントの下は古ぼけたシャツとズボンである。いかにも駆け出し勇者のナビゲートを務めそうである。喋り方もなんとなくぽい。
「誰だお前は」
兄が尋ねた。初対面の謎人物にも臆すことなく対応する、男らしさがある。
「僕はリッカ。君達のサポートをするよう、教会から仰せつかって来た、魔法使いさ!」
「そうか。よろしく」
「よろしくお願いします」
「反応薄っ」
大仰な自己紹介をあっさり流され、前のめりになるリッカ。すぐに態勢を整え、慌てた様子で聴く。
「そんなっ。もうちょっと微笑ましい反応してよ。動揺してよ」
「すまないが、道案内を頼みたい。とりあえず、この森を抜けてしまいたいのだが、先導して頂けるか?」
ガン無視する兄。リッカの奇抜な格好にも驚く様子がない。
「ちょっと話聞いて!君達ほんとうに何もわかってないんだね、もう家には帰れないんだよ?」
「それはどういうことですか?」
比較的常識人の妹が聞いた。リッカは安堵の表情を浮かべ妹に向き直る。少なくとも妹には話が通じる。しかしここで兄はいない事にされた。
「君達は前世で一度死んだんだ。これからはここ、異世界で勇者となってもらわなきゃならない」
「道案内を頼みたい」
「死…?どういうことですか。私達はただこの森に迷い込んで…」
そこで言い澱み、黙る妹。
「思えば、ここまで来た記憶がありません。先程落ちるか何かして受け身を取ったのは覚えているのですが、その前の記憶がさっぱり…」
「道案内を頼みたいんだが」
「そう。召喚される時の記憶は消される事になっているからね。死んだ時の記憶もないはずだよ」
リッカは声を少し落とし、妹の様子を窺うように言う。
「ショックだろうけど、何かしらの原因で君は一度命を落としたんだよ」
兄は数えられていない。
「そうですか…まぁ、兄上がいるなら大丈夫です!何が起こったのかはよく分かりませんが、体もこうして無事なわけですし!」
とんでもない事実をいとも簡単に受け入れる妹。
そして自分が会話に登ったことを察した兄。顔を輝かせて突然元気よく喋り始めた。
「道案内を」
「受け入れるの早いね君…。まぁ、生活のサポートは僕達がするし、たしかに不安を抱くことはないよ」
すぐに遮られた。
とりあえず兄は、人の話を聞かない。
しょんぼりする兄を尻目に、妹は腕を組み考え込む。
「そういえば、貴方は先程、『勇者』と言っていましたね。それは何のことですか?」
「『勇者』というのは、簡単に言うと魔王退治をする仕事のことだよ」
「「魔王?」」
兄妹の声が綺麗にハモる。リッカは深く頷いた。
「そう。この世界には魔王がいて、手下のモンスター達を使って人間を娯楽代わりに襲わせているんだ。君達には、そいつを倒してもらいたいんだ。だけど命の危険が伴う。引き受けてくれるかい?」
兄妹は顔を見合わせ、リッカ以上に深く頷く。
「それより道案内を」
「もちろんです。武力は守るためにあるもの。決していたずらに他を傷つける為のものではありません」
「良かった、ありがとう。それじゃあ早速、僕の街に案内するよ。君達もしばらくはそこで宿泊してもらう事になるよ」
付いて来て、と身を翻すリッカ。
「おお、やっと道案内をしてもらえるのか」
「兄上、ちゃんと話は聞いていたのですか?」
「いや、全く分からない。何やらごちゃごちゃと話していたな」
「はい。実はかくかくしかじか」
「なるほど!つまり俺たちはひょんな出来事で命を落とし、異世界へ召喚された後、召喚主である教会から異世界を跳梁跋扈する魔王を退治する依頼を受け、教会に所属する見習い魔法使い・リッカのナビゲートのもとモンスターと戦う訓練を受ける事になったのだな!」
何故伝わるのか分からないし、もちろんリッカはそんな細かい所まで説明していない。しかしそこが、この兄妹の人間離れしたところである。
リッカはもう突っ込むのを放棄していた。この兄妹に対しては、正しい選択である。いちいち気にしていたら、身がもたないのだ。
「そういえば、モンスターとはどういったものなのですか?丁度先程見慣れない動物を目にしたのですが、
それもモンスターなのでしょうか」
「どんなやつかな?」
「青くて、半透明でした。とても打撃を与えたくなるような」
「後半はスルーするね。それは多分スライムだよ!基本中の基本モンスターだね」
前を歩くリッカは、兄妹が驚愕に目を見開くのが見えていなかった。そのまま話を続ける。
「でも、まだ駆け出し勇者の君達には十分強敵だよ。まずは武具を調達して…」
「「ということは、倒してもいいの(です)か⁈」」
「え?そりゃ…倒した方がいいに決まってるよ。でも、今言おうとした通り…ってあれ?」
振り返ったリッカには、全力疾走で去っていく兄妹の姿が見えていた。
「ちょっとどこいくの⁈危ないってば!」
「すまない少しあれと戦ってくる!」
「ええ!戦うのです勇者として!別にあの触感を楽しみたいとかそういうことでは全くなくてですねほんとうに」
磨き上げられた彼らの脚力には、誰も敵わない。もやしっ子であるリッカは、ただ彼らの後ろ姿を見守ることしかできなかった。
「えええ…何なのあの人たち…ほんと話聞かないんだけど…」
その日、森に生息するスライムが、一気にその姿を消した。が、その原因を知る者は誰もいなかった。
出来るだけ続けて行きたいです。
ちょこちょこ出すつもりです。