フゥラ(3)
ー感情のない夢世界。
その言い方はなんだかストンと心に落ちた。
機械じみた喋り方のフゥラ
やけに静かなこの世界
…言われれば確かに、感情が抜け落ちている。
「……ここは…夢世界」
「そう。ここは夢世界の中のアルブァーマ大草原。」
また新しい言葉が出てきた。
アルブァーマ大草原…たしかに、大草原と呼ばれてるのは納得できるくらいの広さ。
だだっぴろくて、見渡す限りの緑。
「アルブァーマ大草原…ってことは、ここの近くには街は無いのか?」
「ん?あるわよ。大草原を抜けると、だけど」
フゥラはあっけらかんと言った。
…大草原を抜ける、って…
「え…めっちゃ時間かかるんじゃ」
「メッチャ?」
ぽつりとこぼした一言に、フゥラは首をかしげた。
…異世界だと、やっぱ言葉のレパートリーも違うのか…?
「メッチャっていうのがよくわからないけど、時間はあまりかからないわ。ここからまっすぐ行けばすぐよ」
「お、おうそうか」
「街を目指すのね?」
フゥラに言われて頷きながら前を見据える。
正直まだいろいろわかってないけど、歩きながら考えるとするか。
「まぁな。フゥラ…さんは?」
「わたしの住処はここよ?ここから出ようだなんて思わないわ。」
ばっさりと切り捨てられ、これからの道を一人で行くことが決定。
…が。
「…と思ったけど、貴方について行くことにする。」
「え、いいの?」
フゥラは頷いた。
「貴方ひとりじゃ、きっとすぐプルールの餌よ」
「プルー……?」
「緑色のクマよ。好物は蜂蜜」
あぁ、俺の世界で言うところのいわゆるあの黄色いくまさんみたいなやつか。
「って、そんなに強いやつなのかよプルール」
「うーん…初級なのに変わりはないけど、貴方丸腰だもの」
「うっ確かに」
俺はこの世界で役立ちそうなものは何一つ持っていない。あるのは胸ポケットのペンとスマホくらいだ。
「さ、行くと決めたらさっさと行きましょう。えーと…」
「ーあぁ、忘れてた。俺は響喜司だ」
「……ツカサ。変な名前ね」
この世界の人に比べたらよっぽど普通だと思うが。
そうは思ったもののもうフゥラは歩き(飛び?)始めていたので、俺もいそいそとそのあとに続いた。