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フゥラ(2)
ーー大昔。
かつては賑やかだった街が、一瞬で静まりかえった。
ー空に浮かぶ、1人の女の存在を知って。
真っ白なドレスに真っ白な肌。
美しい金髪をなびかせる彼女に、誰しも言葉を失った。
それは唐突に起きたことで、みんながみんな何が起きたかを理解できていなかった。
ただただその美しい女に目も心も奪われていた。
「ーごきげんよう」
淡い桃色の唇からつむぎ出された挨拶に、誰もが身を震わせた。
「わたくしはティーナ。この世界から、大事なものを奪う者。」
そう言った女ーティーナは、真紅の剣を空へ掲げた。
ーそして、
この世界から感情が消えた。
「…ティーナはまだ生きているの。誰にも姿を見せず、みんなから奪い続けている感情と共に」
「……」
ことばを失った。
フゥラから語られたティーナは…一体何者なのか。
感情を失った人達は、どうしているのか。
「ーフゥラ、俺がいるここは、どこだ?」
「……草原よ。見てわかるでしょう?」
「ちがう。…この世界は、どこだ?」
フゥラは息を飲み、ため息混じりに言った。
「ーここは夢世界。感情のない夢世界、よ。」