会長編 後日談
「いろいろと、お騒がせしました」
私は深く礼儀正しく、親友に頭を下げた。
それを見た親友、遠野ちゃんは目を丸くしていた。その反応が面白くて、私はにっこりと笑う。
「……はぁ」
遠野ちゃんは何かに諦めたようにため息をついた。
「アタシ、アンタを甘く見ていたのかもね」
「ん?……んー、ううん?」
「随分と曖昧ね」
口の片端だけを下げて、遠野ちゃんは言った。
「甘く見られてもいた……同時に、遠野ちゃんに支えられてもいた。あの時、傷つくのは遠野ちゃんも同じなのに……言ってくれてありがとう」
「……あの時より、アタシ弱くなったなあって思ったわ」
「そうだね。あの時は泣いてなかったもんね」
「昔も今も泣いてないわ」
遠野ちゃんは胸を張る。
そうだね、それだけ強い遠野ちゃんなら、”泣く”に入ってはいないんだろうね。
私は微笑んで、そして時計をチェックする。
「そろそろだね」
「そうね」
冬の訪れが感じられる服装の人たちが、空港を行き交う。
もうすぐ、本格的な冬が始まる。
弟を見失ったあの冬から、私の心ははじめて軽くなったような気がする。
あの人たちのおかげで、私の罪も、弟の罪も、真っ暗闇にぜんぶ、飲まれたような気がした。それはとても、綺麗に、きれいに。
「……頑張ってきなさいよ?」
「うん。竹都くんたちから抱えきれないおもぉいプレゼントを貰ったもんね」
「……」
私は小さな荷物を持って、歩き出そうとする。
すると、遠野ちゃんが私の手をとった……というか、掴んだ。
冷たい女性的な指が、私の手をぎゅっと握る。
「遠野ちゃん?」
「アンタの答えはさ、なんなの?」
「答え……」
ああ、そういうこと。
「遠野ちゃんのとも、きっと竹都くんのとも違うんだよ」
「はあ?」
「会長ちゃんは、みんなの想像の斜め前をゆくのだよ!」
「……斜め後ろじゃないだけ良いわ」
遠野ちゃんは手を放して、そのまま私の頭にぽふぽふと手を置いた。
「じゃあ」
遠野ちゃんは手をどけて言って、
「うへへ。うん、じゃあ、行ってくるね!!」
手を小さく振る。
「ええ。行ってらっしゃい」
遠野ちゃんはそう優しく言った。
そう、私は、遠野ちゃんみたいにずっと忘れる、なんて強いことはできない。
そして、きっとあのお人好しの竹都くんが考えるであろう、ずっと思い続けることもできない。
時々、そっと思い出そう。
毎日必ずやってくる夜のように、時々見留められてしまう真っ暗闇のように。
宝箱から取り出すみたいに。
私は弟を大切に、心にしまっておこう。
そうして私は歩き出す。
背中に、たくさんの繋がりを感じながら。
これにて会長編は終了です!
次回はついに最終回となります、本当に、本当にようやくここまでやってこれたという感じで……
今度こそギャグ強めのシリアスにしたいですね!重い話はご勘弁ですよね!
ではでは、最終回はじめるのに時間かかりそうなので、最終回のキーワードでもお送りします。
『わかったろりこんはにほんのぶんかだ!』
です。それ!では!