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文化祭 01

文化祭まであと一日。

ついに明日が文化祭なのだ。

私は高校生になってはじめて文化祭というものを体験するから、この雰囲気はどきどきする。

夜遅くまで飾り付けをする人たち。委員会で走り回る人たち。ちなみに私もその中に含まれている。生徒会の一員である私は、忙しく暗くなっても学校にいた。

そして、少し抜け出して被服室へ向かう。

今日は衣装合わせをするのだ。



「あれ、梨緒は?」

俺は生徒会室を見渡す。

さきほどから気になってはいたが、それよりも会長の子守で聞くに聞けなかった。

しかし、生徒会の仕事も一段落したため、帰ることになったので梨緒を探すきっかけとなったのだ。

「梨緒ちゃんは被服室に衣装合わせにいったよー」

生徒会長が机でうだうだしながら教えてくれた。

「はぁ……ありがとうございます。生徒会長も、明日から更に忙しくなりますから、早く帰ってくださいね」

俺は強く警告して、鞄を持って生徒会室をでる。

「おうさー」

生徒会室の扉が閉まる前、生徒会長の気力のない声が最後に聞こえた。



「はーあ。竹都くんも過保護だなあ」

一人になった部屋で、わたしは呟く。

「でも、まだまだなんだよねぇ」

一人によによしながら、明日から始まる文化祭に思い馳せた。



「梨緒?」

被服室を覗いてみると、ファッション部ががやがやとうるさくしていた。

が、俺が入ってくると、少し静かになってあの梨緒にいきなり抱きついてきた後輩がやってきた。

「あ、竹都先輩!梨緒ちゃんなら今着替え中ですよ」

「着替え?」

「はい、ちょっと衣装合わせをしていたんです。終わりましたから、もうすぐ来るかと思いますよ」

後輩がそう言うと、

「あ、竹お兄ちゃん!」

ナイスタイミングで梨緒がやってきた。

「あぁ、梨緒。……もういいか?」

「うん。もういいって」

梨緒はにっこり笑って頷く。

「では、明日お願いしますね!」

後輩が元気に言う。

その言葉で、ああ、もう明日なのか、と実感する。

浮わついた、地に足がつかない文化祭前の雰囲気。

まだ二年目の文化祭。もう二年目の文化祭。

なんだか時を感じるなあとか老いたことを考えながら、俺と梨緒は被服室をあとにした。

しばらく無言で廊下を歩く。

俺は傍らにいる梨緒の様子をうかがう。と、梨緒はそんな横目も気にせず、うきうきした様子で微笑んでいた。そんな姿に、俺も微笑む。さきほどまでわがままでうるさい会長と一緒にいたため、さらにこの静かな時間が愛しい。いや、会長も賑やかで良いのだが……

「文化祭、楽しみだねっ」

弾んだ声で梨緒は言う。

俺は静かに頷く。

「なんかね、文化祭の開会式の時に、ふーちゃんと私が壇上に上がって開会宣言みたいなのするんだって」

「あぁ、確か毎年恒例らしいな」

去年もやったし、会長の話では一昨年もやったらしい。

「あ、そういえば一昨年は会長がモデルをやったとかそんな話があったな……」

「えっ、あの会長さんが!?」

梨緒は本当に驚いた顔をした。

まぁ、確かに驚くだろう。

会長は企画はするがその指揮だけする人だ。首謀者。少し遠くから見て傍観者をして一人で面白がってる人だ。いや、言い方が悪いが……

いや、正しいのかも知れない……!

「まさか、会長さんがモデルやるなんてね。どんな服だったの?」

「……」

「……」

廊下に、ただ足音だけが響く。

「え?」

梨緒はもう一度聞く。

「……まぁ、会長らしい服だよ」

「……?」

梨緒はぱっとしないのか、首をかしげた。

まあ、想像にお任せしよう。

「ううん……会長らしい……会長らしい」

梨緒は色々考えていた。

俺は考えることに夢中になっていて歩みの遅い梨緒に、ほら、早く帰るぞ、と促した。

「あ、うん……!」

梨緒はててて、と小走りで追い付いてきた。



ちなみに梨緒を夏池宅まで送るため、夏池宅の玄関を開くと、

「お兄ちゃんは今、君たちに二つ、聞きたいことがある」

と、真剣な様子で玄関で仁王立ちする啓悟がいた。

「?」

梨緒は首をかしげて、俺は無反応。

「蚊が入るから早く閉めなさい」

啓悟は強かに言うので、俺は梨緒を啓悟の元に残し、外に出てドアを閉める。

そしてすぐ近くの自分の家に帰ろうとすると、

「いや、待ってよ!だから二人に話があるんだってばよ!!」

「だってばよ!?」

玄関のドアが勢いよく開き、啓悟がわあわあ言う。夜八時にこんな大声出してすみません。裁くならこのアホを裁いて構いませんから。

「お兄ちゃん、蚊が入る!」

後ろから梨緒が厳しく言う。

「はい、さーせん!!」

「うるさいだまれ」


で。


「お兄ちゃんはまず、梨緒に言っておきたいことがある」

啓悟を前にして、俺のとなりに梨緒が座っている。

なんだこの三者面談。

「なんでこんな遅いんだ」

父親か。

なんて突っ込みは頭の中だけでしておく。まぁ、常識的にな。

「生徒会の仕事で忙しいの!」

むっとした表情で、梨緒は言う。

「ほんとか?」

啓悟はずい、と顔を寄せてきた。

俺は普通に頷く。

「……ふむ」

ゆっくり冷静になるように、元の位置に座った。

「じゃあ、これはなんだ」

机の下から何かカラフルな紙を出し、ばんと机に叩きつける。

俺と梨緒はそれを見る。

……ただの文化祭のポスターだった。

しかも、俺たちの高校の。

「……ただのポスターだ」

「そうだ。だが、なんのポスターだ?」

「文化祭?」

「そう、文化祭だよ!!」

がば、と立ち上がる啓悟。静かにしないか。

「オレは今非常に悲しい!」

「どうして?」

「なんで、なんで教えてくれないんだ!親友である竹都も、妹である梨緒も、なんで文化祭だと言ってくれなかったんだ!保護者へのお知らせの紙とかなかったのか、梨緒!」

「あったけど……お母さんに渡した」

「なんでお兄ちゃんには見せてくれないんだ!」

「だって保護者じゃないでしょ!お兄ちゃんに保護者は務まりません!」

梨緒も言うようになったなあ……

「お兄ちゃんは文化祭に行きたかった!」

「だったら来れば良いでしょっ」

「来れば良いでしょ!?梨緒がそんな冷たい言葉使うなんて!担任は誰だ!」

なんかよく分からない会話になってきたぞ……

俺はため息をついて、机を少し強く叩く。人の家のものだが、今は致し方ない。

その大きな音に、梨緒と啓悟は弾かれたようにこちらを見た。

「話がそれてる。元に戻そう。ついでに落ち着こう」

「あ、うん……」

梨緒は眉を下げて静かに座る。啓悟は決まり悪そうに座る。

まだまだ子供だなあ……

「で、啓悟は明日は何か用事があるのか?」

「あぁ……明日は朝早めに起きて布団を干して、部屋の掃除をしたらリビングも掃除しようと思ったんだ……」

うわあすげえ真面目な用事だな。

「でも、それやめて文化祭来れば良いじゃないか」

「……」

「?」

啓悟はぽかんとした顔でこちらを見ている。

そしてしばらく考える仕草をし、人差し指をこちらに向けた。



「それだ!!」

「馬鹿だ」



文化祭がやっと始まりましたがもう八月です!

七月中に終わらせる予定でしたが、なんとここまで延びやがりました。


頑張って夏休み前半には終わらせてちょっと小ネタ話をしたいです。

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