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文化祭 準備編 02


ファッション部は確か被服室だったかな。と俺は暗い廊下を歩く。

確かに幽霊が出そうといえば出そうだな、と俺は思いながら歩く速度を緩めない。

幽霊に驚くなんて女々しい精神は生憎持ち合わせていないのだ。

……正しく言うと、幽霊が出ても興味がないためなんの感想も出てこないと言うのが正しい。

ぼーっとしながら歩いていると、無事被服室へと辿り着いた。

被服室からがやがやと楽しそうな談笑と、ミシンの音が聞こえてきた。

俺は丁寧に被服室の扉をノックした。

すると、被服室の音がいっきに止み、しん……と静まり返ってしまった。どうぞ、と短く返事が返ってきた。

俺はその静まり様に驚き、緊張で扉を開くのに一瞬躊躇い、扉を開いた。

被服室の中に入ると、十人くらいのファッション部がそれぞれ目を丸くして見ていたり、その顔に恐怖の色を浮かべていた。

そして、沈黙。

俺は全く進展しないファッション部の反応を見て、何か言われるのかなと少し待っていたが口を開いた。

「生徒会副会長の、春川竹都ですが」

と自己紹介をした途端、ファッション部の人たちはなんだー、と安堵の表情になってその場に項垂れた。

「幽霊じゃなかったね」

「いやー。良かった良かった」

「でも、やっぱりこんな時間に幽霊ネタは駄目だね」

「冷や冷やしちゃったよー」

ファッション部員が口々に話し合い始め、再び被服室が騒がしくなる。

そこで、ファッション部の一人が反応に困る俺を見かねてか、声をかけてきた。

「で、副会長くんがファッション部に一体何の用?」

人懐っこい笑みを浮かべながら尋ねてきたのは三年生だった。

ファッション部らしく、髪をきれいにお団子にしている。まぁ、ファッション部らしい、というのは俺の偏見だが。

「はい、実はですね」

俺はきびきびと、文化祭についてファッション部に伝えた。

するとファッション部内が、また静まり返ってしまった。

……なんなんだ、この一体感。

俺は関心を通り越して軽く恐怖しながらファッション部三年生の言葉を待つ。

ファッション部三年生は、先程とは打って変わって、深刻な面持ちのまま黙っていた。

隣にいるもう一人の三年生が、横のお団子の少女をつつく。

「部長、やっぱり頼んだ方が良いよ。ほら、丁度竹都くんだって来てくれたんだしさ」

と、こそこそ耳打ちをした。

しかしこんな静まり返っていては簡単に聞こえるに決まっている。

部長と呼ばれたお団子の少女は、そんなことを気にしたりせず、そうだね、と小さく頷いた。

「あの」

表情は変わらず固いまま、部長はおずおず口を開いた。

「実は、竹都くんにお願いがあるの……いえ、あるんです」

「はぁ……俺に、ですか?」

「そうです。まず、お願いをする前に、少し説明をします。今年もファッション部は、モデルさんに依頼をして、ファッション部が作ったドレスを着て、文化祭を回って頂こうと考えているんです」

「あぁ、毎年やってるみたいですね」

ファッション部は今までの文化祭の書類に目を通した限り、ファッション部がオリジナルで作ったドレスをこの高校の誰かに着てもらい、宣伝がてら歩き回ってもらうと言うのが伝統らしい。

今年もその伝統を受け継いで、その企画をやろうとしているらしいが……

何か問題があるらしい。

「もしかして、まだその衣装ができていない、とか?」

「いいえ……ドレスはもうほぼできあがっているんです。だけど……」

「そのドレスを着る人が、ね」

決まり悪そうに、隣の三年生が部長と俺を交互に見やる。

「モデルが、どうかしたんですか?」

「今回のドレスは、ある子たちをイメージして作ったものなんです。その子たちの性格、個性を生かせるような……その、モデルがですね」

「許可をとっていないんですね?」

俺がそう確認すると、部長たちははい、と正直に頷いた。

「では、そのモデルに許可をとるために、俺がそのモデルに聞いてくる、と……」

「そう、……話が早くて助かります」

申し訳なさげに部長は眉を下げた。

「そのモデルさん、この依頼を引き受けてくれる可能性が低いんですよ」

隣の三年生が言う。

「そのモデルとは誰ですか?聞いておきますよ」

俺は、モデルの名前を聞く前から、ファッション部の協力を引き受けた。

しかし、次の部長の言葉で、早くも俺の心は揺らいだ。


「一年、夏池梨緒ちゃんと」

「二年、梅田冬子ちゃんです」


部長、とその隣の子は、慎重な面持ちで、その名前を告げた。



お久しぶりです。

梅雨効果で全くといって良いほどテンションが上がらず筆が止まっていました……

じめじめして脳にキノコが生えたみたいです。

とにかく、書けるときには書くようにしたいです……!

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