文化祭 準備編 01
生徒会にとってかなり忙しい時期が来た。
高校生にとって一番の青春でもあろう、学園祭、または文化祭。
うちの高校は進学校のため、学園祭は六月にやるのだ。
そして、その時期がついに来たのだ。
俺は一年生のときから生徒会にはいっていたが、今は副生徒会長。責任もあるし、各展示グループの概要を把握しなければならない。なかなか気が重いときだ。
「あうー、文化祭って楽しいばかりじゃないのがいやだよねー」
「そうやってグチを言いながらも手を動かしてくださるとこちらとしても嬉しいのですが」
生徒会長、と、俺はだらだらと机に突っ伏す生徒会長の前に印刷した書類を置く。
「これが演劇部のタイムテーブルです。あと、美術部の展示品についてと……」
「ううー、分かった分かった、ちゃんと見ておくからー」
生徒会長はうだうだしながらも書類を手にとる。
文化祭の準備や管理も、この生徒会長がきちんとしてくれればかなり楽になるだろうに……と、実現もしない幻想に期待してみたり。
悲しくなるだけだが。
生徒会室には、ただいま生徒会長と俺しかいない。
外はもう暗くなっていて、つまりは俺たちは残業というやつだ。
「はー、生徒会長ちゃん宿題がたまりにたまってるんだけどー」
「そんなの、計画的にやらない会長が悪いでしょう」
「ぶーぶー、でも生徒会長ちゃん本気出せば宿題なんてちょちょいのていだよ」
「あぁ、そうですか」
生徒会長が少しずつおかしなテンションになりつつあるため、俺のテンションは反比例。
と、俺は何気なく見ていて紙の、ある部分に目がとまった。
「生徒会長、この未定、って……」
俺は目にとまった箇所を指差して会長に見せる。
会長は興味なさそうな目でそれを見て、あー、と間延びの返事をする。
その紙は各文化部の展示品について書かれている。
そこに、展示品は出すが、内容は未定と書いてある部活があったのだ。
「ファッション部でしょ?あそこねー、なんかいろいろとトラブルが起きたらしいよー」
「トラブル……?というか、この展示品の期限、明日ですよね?」
もう文化祭はすぐ近くだ。早く申請を出してもらわないとファッション部は文化祭に出展ができないのだ。
「あー、ファッション部には可愛いお友達もいるし、それは大変だねー。副生徒会長くん、生徒会長ちゃんの代わりに催促してきておくれ」
生徒会長はのんきに微笑みながら俺にそう命令を下してきた。
「会長のご友人なら会長が行くべきでしょう」
「やだよこんな暗い中学校を徘徊するのー。もし幽霊と遭遇しちゃったら生徒会長ちゃん泣きわめいちゃうよー」
「……」
会長にそんな女々しいところがあったのか、と俺は戦慄した。
「……」
「……」
本当に動かないつもりらしい、この生徒会長は。
友達なくすぞ。
と心の中だけで毒づいて、俺は行ってきますと生徒会室を出た。
「いってらー」
というのんきな声が生徒会室から聞こえて、扉は静かに閉まった。