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新聞編 後日談 side竹都

梨緒と一緒に帰らなかった日は数日しかなかったが、久しぶりに梨緒の家にお邪魔させてもらった。

いや、正確には啓悟の家に、か。

今日は土曜日。宿題に追われている午後に、いきなり呼び出されたのだ。

俺は怒りなどなく、ただ諦めた気持ちのため息をつき啓悟の家へと向かったのだった。

「お邪魔します」

久しぶりに上がる啓悟の家は、自分のもうひとつの家のように安心感を与えてくれた。

リビングに入ると、俺が来ない間にどうやら炬燵はしまったらしい。随分とすっきりとしていた。

そして、梨緒の姿が見当たらないので、

「梨緒は?」

と尋ねた。

すると啓悟は、

「二階で宿題やってる」

と、なぜか元気のない声で返してきた。俺はそんな啓悟に目を丸くした。

だって、あの啓悟が。

元気とアホしかない啓悟が。

なんでこんなに……

啓悟としばらく会わないうちに、啓悟のほうでも何か起きたのだろうか。

「とにかく座れ」

あんなに自由人な啓悟がついには席をすすめた。

あぁ、頭を打ったのかもしれない……

と本気で諦めや納得をし始める。

啓悟に言われた通りに静かに座る。

啓悟もその場に座った。

そこは、いつもの定位置。

いつもの風景だった。……梨緒はいないが。

「……三日前くらいから、梨緒の元気がないんだ」

啓悟は、重苦しい雰囲気の中、静かに話す。

「……」

俺は押し黙った。

そうだ、啓悟が心配しないわけないじゃないか。

俺はただ静かに啓悟の声に耳を傾けていた。

「三日前から、学校で何かあったのか?竹都の名前を出したとき、梨緒はオレに何でもないから、の一点張りだったんだ」

俺の名前を出したとき。

確かに俺はあの事件の中心人物でもあったわけだが……

梨緒が啓悟に対してそんなに頑なに隠す事件でもないような気がする。

「梨緒と、何かあったのか?」

啓悟は直球にそう、聞いてきた。

もう終わったことだから、と、俺は胸に渦巻く不安感や不確定要素を明らかにしようとはしなかった。


何故、梨緒までもがこの事件に対して不安感を抱いたのか、ということを。


しかし俺はそんなことを頭のすみでも考えず、啓悟に事件の発端と終結について短く説明した。

事件についておおまかに理解できた啓悟はふむ、と頷き、俺を見た。

「とりあえずは、全部解決したんだよな?」

「あぁ、とりあえずな」

終わったし、解決した。

しかし、それで全てが丸く収まったわけではないのだ。

冬子は……

と、冬子の顔が脳裏に浮かんだが、俺はすぐにそれを掻き消した。

冬子には、これ以上辛い思いはさせたくない。つまりは、もう中途半端な優しさなど、しないということだ。

できないということだ。

「そっか、じゃあ、またしらばくしたら元気になってくれるかな」

「良い兄を演出できていたが、今の決定的な噛みで全てが台無しになったぞ」

しらばくってなんだ、しらばくって。

やはり啓悟は啓悟でしかなかったと、俺は正直安心した。

「ははは」

「笑ってごまかすな」

「まあまあ、竹都からきちんと話が聞けてよかったよ」

「はあ」

「よし、状況も理解したし、まさか反抗期かと不安だったお兄ちゃんは今日からまたべたべたするぞー」

「やめい」

俺は変わらず即座に突っ込んだ。


まぁ、またこんなゆるい馬鹿な日々が始まるのだろう。



きっと、また。


さて、これにて後日談も終了です。

今月は時間に余裕があるのでいそいで話を進めたい、です……!

でも次のお話はあらすじもちゃんと決まってますから、止まることはないかと思われます。


はい、思われます。



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