新聞編 後日談 side松川
梅田ちゃんは泣いていた。
全校生徒が集まっているあの体育館で、惨めなまでに泣いていた。
それに気付いたのは、オレと、優しい梨緒ちゃんだった。
つまりは、竹都ではないということ。
竹都は、気付かなかったということ。
要約すると、梅田ちゃんは全校生徒の前でフラれたわけだ。
竹都もひどいことするなあ、なんて苦笑しながら、それでも楽しく見させてもらった。いや、オレには別に他人の不幸で嬉しがる悪趣味は持っていない。ただ、自分の思う通りに事が進むのが愉快なだけだ。
それだけ。
まぁ、梅田ちゃんってからかいがいがあるし、 多少は不幸にしてやりたいと思ったかも知れないけど。
まあまあ、そんな下らない話は置いといて。
あとは、竹都と梨緒ちゃんがどうこうする問題だよな。
竹都のほうは親友のオレがそれとなく梨緒ちゃんの話をしていればいいだろう。梨緒ちゃんは少なくとも竹都よりは大人だから、まあ放っておいても良いだろう。
オレは肩の荷が軽くなり、ため息をついた。
そうだなあ……もうそろそろ文化祭っていう一大イベントがあるから、ああいうノリでも二人は仲良くできるだろうな。
そう考えていると、ふと自分があるものをずっと見ていることに気付く。
写真。
二人の人間が写っている、写真。
いつだって強情で傲慢で、いつだって人を見下して笑う。
残酷なまでに優しい、彼女。
でもこの時は少し、いつも通りの小さな喧嘩をしたあとだから、彼女は無愛想だったのだ。
あいつは、文化祭に来るだろうか。
自然と、ぽつんと思い、ただ暗い気持ちになった。
彼女はオレを許してはくれない。
もう二度とオレには会いたくないだろうに。
オレは自嘲し、写真からむりやり視線を外した。
「遠野……」
しかし、彼女の顔が脳裏から離れることはなかったのだ。