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新聞編 11

なんで、なんでなんでなんで!

あたしはずかずかと廊下を歩いた。ただ、ひたすら歩いた。

朝から最悪だった。ううん、昨日の夕方から最悪!

どうしてあそこで梨緒ちゃんに説教されて、挙げ句の果てには朝からあの間抜けな顔を見なくちゃならないの!?

しかも、もう何もないとか、もう初恋の人じゃないとか決めたのに、平気で声かけてくるし!そもそもあたしたちは今全校に目をつけられてるし!

あぁもう自分が何をいっているのかも分からない!

とにかく、落ち着こう。

そう思い、あたしは歩調をゆるめる。荒げた息も整える。

そして、ため息。

だって、昨日を最後と決めたのに。

あたしの恋はもう終わったのに。

あんな風に優しく声かけられて、逃げ出そうとしたのに名前を呼ばれて、何を言われるかと思えば普通に挨拶で拍子抜けしたし……

なんかいらいらしてきた。どうして何も察してくれないの。どうして何も気付かないの!

と、いらいらするあたしの前を、悠々とある男が通り過ぎる。

そいつは、松川。

あたしの、(大はつかなくなったけど、)嫌いな人。

だからあたしは感情に任せて松川の腕を掴み、廊下の隅へと引きずっていく。

「なになに、いきなり愛の告白?嬉しいんだけど悲しいことに梅田ちゃんはオレのタイプじゃなぶふっ!!」

右ストレート。

生まれてはじめて人を殴ったけれど、我ながらに良い殴り具合だった。

「はぁ、すっきりした」

うん、これで今日は快適な一日が過ごせそう。

なんて一人で満足していると、面白そうに笑う男が、目の前に。

「……なかなかのパンチだったが、遠野ほどじゃなかったな」

「……ん?」

松川の呟きに、あたしは聞き返した。

しかし松川はいいや、と意地悪そうに笑った。

てか、人が殴ったのに笑っているなんて、殴られ慣れてるのかしら。さらにむかつく。

「うーん、そうだな。梅田ちゃんは昨日竹都にフラれたんだな。しかも梅田ちゃんの勝手な妄想の中で。そして梅田ちゃんはこれが最後、なんてかっこよく決めたは良いが、靴箱で梨緒ちゃんと出くわして梨緒ちゃんに何故か責められて、逃げて泣いて、そして今朝竹都に会わないために早めに学校にきたが竹都がジャストタイミングで登校してきて、普通に挨拶とかされちゃったりして……っと」

あたしは黙らせるためにもう一度殴ろうとした。いや、殴った。

しかし松川はそれを軽くかわす。

「え」

「暴力の振るう女の子は勇ましくて良いが、梅田ちゃんはそういうキャラじゃない」

松川は自分の顔の横にあるあたしの腕を掴み、嘲笑うかのように言った。

「っ……ていうか、なんで全部知ってるの!?」

「んー?だって梅田ちゃんは動かしやすいし、分かりやすいし、推測しやすいし……ね」

むかつく、むかつく!

松川なんかに全部見通されたのが嫌だった。松川なんかに腕を掴まれて、松川なんかに見下されて……そして何より、松川なんかに、勝手な妄想、なんて断言されて……

あたしは、泣きそうになる瞳をさらにきつくして、松川を睨んだ。

「うわー、怖いよ梅田ちゃん。泣きたいなら泣けば良いのにー。きっと竹都が優しく声をかけてくれるよ」

「うるさい!」

あたしは腕を力の限り振り払う。

松川は、あっさりとあたしの腕を離した。

「ま、もう竹都と話したくないなら、オレとしては別に良いよ。というかむしろ歓喜だね。でも、殴るんだったらはっきり告白してくれば良いのに。女って分かんないねえ」

面倒臭い、というようにため息をつき、松川は泣きそうになるあたしを残して去っていった。

……竹都が来てくれれば、なんてもう思わない。

ただ。

ただ、竹都があたしの近くを通り過ぎてくれたら、なんて、

勝手な妄想をしてしまうんだ。



竹お兄ちゃんに黙って来てしまった。

と、私は一人教室で考えていた。

竹お兄ちゃんから、逃げてしまったみたいだ。

ううん、違う。逃げたんじゃない。理由は、きっと後ろめたさ。そして、ふーちゃんへの気遣い。

ふーちゃんはがんばり屋さんだから、一人で疲れて見切りをつけることがある。私はそれを、たまに見つけた。ふーちゃんが良いならそれで良いって思っていた。

でも、だめだ。

今回は許さない。勝手に逃げるなんて、許さない。

そうだ。私は、、ふーちゃんだけで終わらせてほしくない。ふーちゃんの気持ちを、ふーちゃんの中だけで消してほしくないんだ。

ちゃんと伝えて。今まで押し込めてきた気持ちを、ちゃんと竹お兄ちゃんにぶつけて。

今まで竹お兄ちゃんは、無意識にかわしていたから……

私は、一人教室で我慢する。


今までふーちゃんが我慢していた時間は、無駄じゃない。

きっと、きっと素敵なことだから!




入学式を終えてきました!友達できるかすごく不安ですが……明日からまた頑張っていきます!

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