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新聞編 10

冬子のあの笑顔に、見とれた。

あんなに綺麗な笑顔は、見たことがなかった。

なんだか不思議な気持ちを抱えて、靴箱へ着くと、梨緒は俯いて待っていた。

いつもなら、俺を見つけてすぐに駆けてくるのに。なんだか今日は、みんな悲しい日なのかな。

「梨緒」

そう呼びかけると、梨緒はゆっくりと頭をあげ、俺を見た。その目は、暗い。

「……」

梨緒は何かを言おうとしていた。

何かを言わなきゃいけないみたいで、しばらく考えていた。

俺はそれを察して、黙っていた。

梨緒は、結局口をつぐんだ。

「帰るか」

言いたくないのなら、言わなくても良い。

俺は靴を履き替えて、梨緒と一緒に校舎を後にした。



徒歩も電車の中でも、梨緒は考え事をしていた。

新聞部のことなら俺に聞けば良いのに、違うことなのだろうか。気になりはしたが、余計な詮索は梨緒を怒らせるだけだ。

そう、多分冬子も同じ。

あの綺麗な、切ない笑顔の理由を聞くことは、できない。

「じゃあ、また明日」

「……うん」

梨緒を家の前まで送って、俺は帰路についた。梨緒は、最後まで何も言わなかった。

相当悩んでいるらしい。

今日でいろいろ、たくさんのことが変わってしまった気がする。

たくさんの人たちの心が。

新聞部のおかげで、明日みんなが笑ってくれることがなくなってしまったような気がする。

「早く……終わらせないとな」

呟いた。

大丈夫。明日の午後は体育館に全校生徒が集まるんだ。

そこで、はっきりと言えば良い。

誤解は、早くとかないと、今日よりもひどいことになるだろう。


「ったく……困らせてくれるな、新聞部……」




翌日、俺はいつもと変わらない時間に梨緒の家へ行く。

ついでに啓悟を起こすのも、俺の日課だ。

しかし、いつもは俺が行かないと起きない梨緒が、今日はいなかった。

「あら、竹くん。梨緒は今日用事があるからって先に学校に行ったわよ」

おおらかな梨緒のお母さんは、おっとりした口調で言った。

「あ……そうですか」

用事……何か俺と一緒にいたくない理由があるのか?と疑問に思ったが、とりあえずは梨緒を追いかけようと、梨緒の家を出ようとした。

「あ、啓悟は今日は、お母さんが起こしてください!」

そう付け足し、俺は学校に向かった。



学校につくと、二年の廊下で冬子に会った。

冬子は目を丸くして、しかしすぐに立ち去ろうとした。

「冬子!」

俺は普通に冬子を呼び止めた。冬子はまた不機嫌らしく、顔は見せずに、背を向けたまま止まった。

「おはよう。今日は珍しく早いんだな」

何気ない話をしただけのはずが、冬子はぎ、とこちらを睨んできた。

俺はその気迫に気圧されて、口を閉じる。

「……」

冬子は何も言わずに、さっさと小走りで立ち去った。

俺は冬子の冷たい態度に少し傷ついたが、そうか、ここは廊下だ。

今噂の二人として見られているから、あまり近付かない方が良いのか……

昨日気を付けていたことをついつい忘れてしまう。

もう遅いが、俺は冬子が走り去った廊下の先を見つめ、

すまない冬子……いつもの癖で話しかけて……

と謝った。



受験から解放されました……志望校が受かりましたので一安心です。

さて、どんどん話を進めていきたいですよー!(願望

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