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新聞編 09

そう、格好良く別れたけれど、やっぱり。

「思い切れないぃぃ……」

呟きながらとぼとぼ歩く。

靴箱についた時、小さな女の子が目に入った。

梨緒ちゃん、だった。

そうだ。このことを梨緒ちゃんに言おう。

宣言して、吹っ切ろう。

強がりの自分を利用しようと、あたしは梨緒ちゃんに声をかけた。

「あ、ふーちゃん!」

相変わらず、梨緒ちゃんは元気が良い。

あたしは微笑んで、竹都を探してるの?と聞いた。

「うーん、待ってるの。新聞部のところに行くって、言っていたから」

新聞部……そっか。竹都も、あたしと同じ心境だよね。

でも大丈夫。明日には、もう終わることだから。

梨緒ちゃんは、あたしの顔をまじまじと見ながら、ててて、と近づいてきた。

あたしと梨緒ちゃんだけでも身長差は15センチはあるだろう。もっとよく見ようと、近づいてきた。

あたしは、つい後ずさる。

が、梨緒ちゃんはあたしの両手をとって、逃げさせないようにした。

「……ふーちゃん、泣いたの?」

う……やっぱり。

察しの良い梨緒ちゃんだ。気付かれる、と分かっていた。

こんな姿見せたくないと思う気持ちと、言わなくちゃという意志がぐるぐるした。

「あ、うん……今、ね」

言うんだ。

宣言するんだ。

ライバルに。恋敵に。

「今……ふられてきた」

梨緒ちゃんの目をとらえて離さないように、注意しながら、真っ正面から言った。

「ふられて……きたんだ」

もう一度、言う。けど、さっきより情けない声しかでなかった。

梨緒ちゃんは、案の定目を丸くしていた。

意味は分かっている。でも、どうして?って、感じだった。

「……」

そして、意外なことに、あたしを睨んできた。

梨緒ちゃんの悪意のある顔を、気持ちを、はじめて見た。

「ふーちゃん、ふられてきた、って……どうやって?」

いつもお姉さんみたいなあたしが、いつも妹みたいな梨緒ちゃんに、叱られているようだった。

察しの良い、梨緒ちゃん。

そうだ。梨緒ちゃん、勝手に逃げちゃうの、許さないような子だもんね……でもね、でも……

「ふーちゃん、勝手に見切りをつけただけじゃないのっ?勝手に、ふられた、って思い込んでるだけじゃないのっ?」

必死に尋ねてくる梨緒ちゃん。


今の、梨緒ちゃんの優しさが、辛い。


何か言わなくちゃって思うのに、勇気がなくて、なくなってきて……俯いて、ただ、泣きそうな声で、


「ほんとに……ふられて、きた、から……っ」


呟いて、梨緒ちゃんの手を、乱暴に振りほどいた。

そして、情けなくも、逃げるように走って、校舎を後にした。




説得力もないかな。馬鹿だなぁ、あたし。


なんて自嘲しながらとぼとぼ帰る。

足取りは、さっきよりも重苦しい。

「……っ」

泣きそうになって、こらえる。

こんな街中で泣いたりしたら、あたしは恥晒しだ。

涙をこらえて、喉がすごく痛い。

もう、嫌だなぁ……

あたしは、自分の心を紛らせるように、いつの間にか走り出していたんだ。


受験、終わりました。色んな意味で、終わりました。

多分受かることはないだろうと思いますが、ただ、また創作ができるようになったことが、嬉しいです。


さて、どんどん話進めて行きますぞ。

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