新聞編 02
「竹都……」
冬子は困り果てた顔で俺をみた。
「あの」
話を続けようとする冬子を、俺が止めた。こんな公衆の面前で、噂の二人が話しているところなど見せられない。
「場所を変えよう」
俺たちは周りから突き刺さる視線をくぐり抜けて、屋上へと向かった。
「屋上なんて、入って良いの?」
「バレなきゃ大丈夫」
俺たちは非常階段から屋上へ向かう。
季節はもう5月。だが、なかなか屋上は肌寒い。
「副生徒会長様が、そんなこと言って良いの?」
呆れ顔で冬子は言う。
「とにかく、今はここしかないんだ」
人目に付かないところと言えば、ここしか思い当たらなかった。
「で、冬子が俺のところにきたのは、あの新聞のことか?」
まぁ、訊くまでもないだろうが。
「うん……なんであんな新聞があるのか……あたし、なんかいろんな人のネタにされるし……」
もう早速冬子はからかわれていたのか……
冬子はしゅんとした顔で、どうすればいいのか考えている。
「あの新聞は、新聞部が作っているんだよな?」
確認すると、冬子は小さく頷く。
「生徒会を使ってあの新聞部に抗議するしかないかな……」
とりあえず、俺は副生徒会長だし、冬子は生徒会書記。どちらも生徒会だ。
「でも、新聞部って……」
「あぁ……」
二人で暗い顔をする。
この学校の新聞部は、顧問部員ともどもかなり性格が悪い。おまけに、先生方から信頼が篤いという最悪な状況だ。
「とにかく、部活の時間にこっそり行くしかないな……放送で呼び出すと、どうなるか分からないし……」
「じゃあ、昼休みあたりに生徒会を集めよう?少しは力になってくれるでしょ」
そうして俺たちは計画を立て、冬子が先に非常階段から降りる。
しばらくして、俺が非常階段から教室へ向かった。
教室へ向かう途中、梨緒が走ってやってきた。
心配してきてくれたのか……とほっとするが、時計を見ると朝の会まであと二分。
「竹お兄ちゃん!」
梨緒は俺を呼び止める。
「あと二分で教室戻らないと遅刻だぞ、梨緒」
俺は内心焦るが、冷静に言う。
「あ、あのね、あの新聞……見たの。それで、違うんだよね?竹お兄ちゃんとふーちゃんは、付き合ってないんだよね?」
「?」
なんでそんなに付き合っているか付き合っていないかと執拗に聞くのか、よく分からなかったが、
「ああ、違う。ほら、早く教室行け」
俺は梨緒の背中を押して促す。
「……信じて良い?」
梨緒が、俺を見上げていった。
梨緒は、こんなに人を疑う子じゃないのに。こんなに、執拗に同じことを訊く子じゃないのに。
「おう、信じろ。大丈夫だって。今日でもう誤解は解ける」
そうして梨緒に微笑むが、梨緒は晴れた顔を見せず、眉を下げて……心配というよりは不安そうな顔で、教室へ戻っていった。
オレは教室から、廊下に竹都がいたので声をかけようとした。しかし、先にどうやら梨緒ちゃんが声をかけたらしく、本人は気付いていないが、梨緒ちゃん仕様の優しい眼差しになる。
噂になる二人というと、竹都と梨緒ちゃんになると思ったんだが……
新聞に載っていた写真は、遊園地での写真だ。梅田ちゃんと竹都が一緒に行動したのは午前。その時に撮られたのか……
もうちょっと早めに手を打っておけばよかったかなぁ……と、オレは思う。
梨緒ちゃんと、竹都を見る。
梨緒ちゃんは、不安そうな顔をしていた。
……
「これは、まずいかもな」
誰に言うでもなく、呟いていた。
梨緒ちゃん、自分は気付いていないが、梅田ちゃんと竹都が付き合っているかもしれない、という情報に揺らされているんだ。竹都を、あまり信じられなくなってる。恋愛感情とは気付いていない、だが梨緒ちゃんは竹都のことが好きだ。その竹都が梅田ちゃんと付き合っている、となると……あまり、竹都と顔を合わせなくなるかも知れない。
そうなると、オレの計画は台無しだ。それにもしこの噂に収集がつかなくなって、梅田ちゃんも竹都もお互いのことを意識し始めるかも知れない。
そうしたら……本当に校内中公認カップルだ!
オレは絶望感に捉えられ、どうするべきかぐるぐると考えた。
あけましておめでとうございます。
今年は、1ヶ月に3回は更新できるように努めます…努めます…
受、受験……ついに受験です……うわわ
そうそう、今日は実の誕生日でした。