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遊園地 後編 14

「……なかなか、よく分かってんだな」

目の前の、梅田ちゃんに言う。

観覧車の中、向かい合わせ。しかも外は綺麗な夕焼け。なかなかのシチュエーションだ。

しかし、今の梅田ちゃんにお世辞言ったら殴られそうだな。だって梅田ちゃんってば竹都が観覧車に乗ってからはずっとオレのことにらんでんだもん。怖いよなー、女って。

「何が?」

ぶっきらぼうに答える梅田ちゃん。愛想ないなー。オレのせいだけど。

「……竹都によくついていかなかったな」

「午後は梨緒ちゃんとまわるんでしょ」

つん、と窓を見てしまう。

あー、かなり怒ってる。

「まぁね」

素っ気なく、なんでもないように答えた。

「でも、良かったんじゃない?竹都と一緒にいると、辛いのは梨緒ちゃんと……梅田ちゃんだった訳だし」

「!」

梅田ちゃんは勢いよく立ち上がる。眉を寄せて、怒ったような顔をした。

「なんなの、松川!?あたしになんか恨みでもあるわけ!?あたしは竹都と一緒で、すごく嬉しかったのに!」

「まぁまぁ、危ないから座って」

暢気にオレは立ち上がり、梅田ちゃんの肩を持って座らせようとした。が、思いっ切り払われてしまった。

うひゃー。

が、梅田ちゃんは静かに座ってくれた。

オレも、座る。

「……あたし、竹都のこと好きだよ」

俯いて、言った。

「竹都が梨緒ちゃんのこと想っていて、梨緒ちゃんも竹都のこと想っていても、あたしは竹都のことが好き……というか、梨緒ちゃんが竹都のこと好きでも、竹都を嫌いになる理由には、できないし……なれない」

「はっきり言うんだな」

「ほんとだもの」

「へぇー……でも、それじゃあ竹都が絶対に梅田ちゃんの方見ないよ?諦めればいいのに、そんな目に見えた勝負。オレの方が分かんないね、そんな竹都に執着して、梅田ちゃんは一体何がしたいわけ?」

「……そうやって聞くなら、松川さんだって答えてよ。どうして松川さんはあたしの邪魔するの」

質問に質問を返すなんて嫌な奴だ。…ってオレが質問を無視したからか。

「まぁ、いいか。そうだな……竹都は…疎すぎるから。さっさと梨緒ちゃんとくっついてほしい訳よ」

「……なんか、随分と省いたわよね?」

お、なかなか見る目があるな。

「他人の過去ってーのは、あんまり詮索するもんじゃないぜ、梅田ちゃん」

「過去?あんたみたいな薄っぺらい男に、他人に語れないような濃い過去を持ってるわけ?」

「うわ、ひっどー」

あんた、か!オレは目を丸くした。なかなか毒舌な女だなー。

でも、なんとなくあいつに似ていた。

なーんか……


気に喰わないなぁ……


「……梅田ちゃん。キミは竹都のこと好きなんだよね?でも竹都は梨緒ちゃんのことがきっと好きだから、竹都は梅田ちゃんに気付くことも、視界に入れることもしないと思う」

梅田ちゃんが悲しそうな、傷ついたような顔をして俯いた。

「今日だって、そうだ。竹都とペアになって、竹都は梅田ちゃんの隣にいた。でも、竹都は梅田ちゃんのことを見ていなかった」

「……竹都は、梨緒ちゃんしか見ていなかったよ…」

オレは自然と微笑む。

梅田ちゃんは、震えた声で言った。

よく分かっていらっしゃる。

「梨緒ちゃんの心配ばっかしてた。あたしが目の前にいるのに、ずっと、梨緒ちゃんのことばっか……」

「ほーらね」

あぁ……でも、なんでこんなに…最低だ。

自分で口走ったことに、嫌な思いをする。今は、今はまだ。

「…でも…でも、あたし、竹都のこと、好きなんだって…」

梅田ちゃんが、泣いた。

オレは、びっくりした。

……え。

「あんな、あんなロリコンでお人好しで、何も考えてないようで、でもみんなのことよく見てくれて、自分犠牲にしてでもみんなを助けようとしてくれる竹都が……好き」

ゆっくり顔を上げ、涙をためた、でもまっすぐな瞳で、オレに、微笑んだ。

微笑んだ?なんで?

オレは、何故か居心地悪くて顔を逸らした。

なんて、イヤな……気分が悪い。

「あっそ。じゃあ、せいぜい頑張れば。……邪魔はするけどね」

オレは、梅田ちゃんを見ずに呟くように言った。


「……ふん。分かってるわ。……負けないんだから」


あー、もう、被るなぁ。


これにて遊園地編はおしまいです!やっと終わった……次は後日談です。松川くんがやたら嫌な人になってしまった…

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