遊園地 後編 13
「……」
梨緒は、何があったのかよく分からないが、ただ俯いていた。
向かい合わせに座っているので、これは気まずい。
……気になるが、詮索することはしないほうが良いだろう。と思い、俺は外の景色を見る。
「外、綺麗だな」
そんなに都会でもないので、田んぼやぽつぽつとした家が見える。その全てが橙色に染まっている。
「う、うん……」
梨緒は、目を細めて夕日を見る。
「綺麗……」
「今日は色々あったけど、楽しかったよな」
冬子は、浮かない顔だったけど。
「うん。楽しかったね」
「松川とどんな話してたんだ?」
「うん?うーん……普段家で何してるの?とか、趣味はなにーとか……」
「なんだそれ」
下心が見え見えすぎる。松川……
「あと……」
言いかけて、梨緒は俯いた。
「あと?」
「ううん」
ゆっくり顔を上げて、梨緒は首を振った。
「あとは、たいしたことない話」
そうして、夕暮れに照らされて赤い顔を、ほころばせる。
不思議な、感じだった。不思議?違う。
どこか、違う。
梨緒のこの表情、どこかで見た…?
うまく思い出せず、まぁいいかと頭から消した。
「お化け屋敷」
梨緒は、また外の景色を見る。
「お化け屋敷ね、また、竹お兄ちゃんと行きたいな」
「はぁ?とか言ってもリタイアしただろ?」
「うん……でも、また、いつか」
梨緒は言って、そのまま黙った。
「……あぁ、分かったよ」
俺は笑って、外を見た。
「…ねぇ、竹お兄ちゃん」
「ん?」
「ありがとう。楽しかったよ」
照れ笑いのような、でも真っ直ぐな、そんな可憐な花のような笑みで、梨緒は言った。
俺は、同じように笑った。