遊園地 後編 12
実さんが目の前に座っている。
何も話さない。
というか話すことがない。
辛い。
なんて辛い空間なんだ……!
何か話さなければ沈黙が痛すぎて死んでしまいそうだ……!
オレは思いながら、何を話そうか考えを巡らす。
実ちゃんは横目で外の景色を眺める。
夕焼け、きれいだね、とか……!?
でそのあとに、でも……君の方がきれいだよ……ってこれ告白じゃねえかこの馬鹿ー!
一人で悶えているとき、実ちゃんが口を開いた。
「今日はとても楽しかったです」
景色を少し見て、そしてこちらを見た。
「あ、うん。オレも!…お化け屋敷が一番だったかなー」
「あの時はごめんなさい。いきなり抱きついたりして」
「いやいや、だって怖かったもんよー。しょーがないって」
オレは屈託なく笑う。
実ちゃんも、微笑んだ。
「……ホラー、怖いところが好きなんです。お化け屋敷は、直に楽しめて、すごく好き…」
「へー。うちの妹はわーきゃー言って楽しむどころか、ぴーぴー泣いてるぞ」
「梨緒は……仕方ないですよ」
苦笑する実ちゃん。
なんか、最初会ったときはそういう子じゃないかな、と思ってたけど、なんだ。
よく表情がかわるじゃないか。
オレはしみじみ思いながら、実ちゃんと話を続ける。
「……わたしは」
実ちゃんは窓の外を眺めながら、呟いた。
「わたしは、今日のなかでどれが一番だったかなんて、順位がつけれません」
「……?」
今、なんか難しいこと言ったぞ。
「つまりは、ぜんぶ楽しかった、ということです」
にこ、と実ちゃんは笑った。
おぉ、そうか。
……そっか。
その言葉と、その笑顔がなぜかうれしくて、オレは満面の笑みで頷いた。
「おうよっ」