遊園地 後編 10
『きゃーーー』
「やだあ!」
お化け屋敷に入った途端に、梨緒が腕に抱きついてきた。
「!?」
俺は驚くが、平静を装う。今少しでも俺がうろたえたら梨緒は泣くに違いない。そうだ、しかも腕に抱きつくぐらいで何故俺がうろたえる。
梨緒は半泣きになって俺の顔を見上げ、叫ぶように言った。
「うぅ……もう出ようよー!怖いようッ」
出る、ってまだ入って30秒もたっていない……しかし薄暗くて雰囲気が出ている。程よく肌寒い。ここのお化け屋敷は日本を題材にしたものらしい。古風な家や、地蔵がたっている。
外国より日本のホラーは桁違いに怖いからなー。思いながら、梨緒と手を繋ぐ。安心させるためと、はぐれないように、だ。
梨緒は気にしたようでもなかったが(気にする余裕もないのだろうが)、確かに手を握り返した。
梨緒はしばらく黙っていたが、やがて落ち着いたのか、もう一度しっかりと手を握りしめ、歩き出した。
俺は、それに合わせる。
「あ、カッパだー」
梨緒は左側にいるカッパに興味を示した。後ろ姿がカッパだ。しかし、こんなお化け屋敷でお化けに話しかけるなんて、なんて死亡フラg
「うにああああぁぁあ」
今度は叫びながら俺の後ろに隠れる。
カッパに視線を戻すと、カッパはこちらを見ていた。
血にまみれた包丁を持って。
……心臓に悪い。
俺はふぅ、と深呼吸をし、行くぞ、と梨緒の手をひく。
こんなところにいたら梨緒がショック死してもおかしくない。
が、梨緒は動かなかった。
「梨緒、どうした……って」
振り返ると、梨緒は泣いていた。
「う〜……カッパはあんな怖くないもん…川に誘われて殺されちゃうなんて嘘だもん〜……」
とかなんとか言っている。
俺はどうしたものかと唸る。
この状態で歩かれてもこっちが泣かしてるみたいで良心が痛む。
俺はため息をつき、梨緒の肩に手をそっと置いた。
とりあえず、途中にあるであろう出口から出て、リタイアしよう。
と、説得してみよう。
泣きじゃくる梨緒に、宥めるように、
「すぐそこに出口があるから、そこからリタイアしよう」
「う…ふぐ……」
泣いているせいでなんて言っているのかは聞き取れないが、梨緒は一生懸命頷く。
俺は梨緒の手を引いて出口へと向かう。
やれやれ。
さて、啓悟たちはどこにいるかな…
お久しぶりです。とにかく遊園地編は早く終わらせようと思います…