後日談 sideロリコン
冬休み一日目。
俺は梨緒と一緒に生徒会室へと向かう。
昨日告白したからといっても、俺たちは普段と変わらずいつも通りに接した。
というか、梨緒が相変わらずな感じなのだ。
学校に行く前には髪をしばってとせがんでくるし……
啓悟もいつもの光景なので何も言ってこない。
いつもの日常に戻ってきたみたいで、俺は素直に安心している。
「あんたたち、付き合ってるの?」
しばらく生徒会室で仕事をしていると、冬子がこっそりと聞いたきた。
俺はその質問にむせた。
とてつもなくむせた。
「あ、あぁ、まあ……」
俺は隠す必要もないと思い、素直に頷く。
冬子はへえ、と言いながら、離れた机で仕事をしている梨緒を見る。
「驚かないんだな」
「竹都にふられた時から、もう早くくっついちゃえよって思ってたからね」
う、それ、嫌味に聞こえるぞ……
女子というのは心臓に悪い爆弾を投下してくるものである。
でも冬子の顔は、素直に嬉しそうにしている。
冬子も、背中を押してくれたんだよな。
俺は心の中で、そっと微笑んだ。
しかし、それは冬子に少し勘付かれた様で、
「何よその、愛玩動物を見るような目」
「あ、いや」
愛玩動物? 冬子が?
愛嬌のある性格ではないし、愛玩動物ではないと思うが……
殴られそうなので、そんなこと口にしないけど。
「竹都、梨緒ちゃんのことすごく大切にするから、梨緒ちゃん応援し隊なあたしは安心ね」
「なんだよ、それ」
「梨緒ちゃん可愛いじゃない。女のあたしだって、すごくうらやましいくらいよ」
「はあ……」
女子からそんなこと聞かされても。と思いながら曖昧に頷く。
けれどすぐに気がつく。
冬子なりの応援なのだと。
相変わらず、感情表現が下手である。
「って、ちょっと、なんでくすくす笑ってるの」
気がつけば俺は笑っていた。
あの時、本当に傷つけてしまったと思った。
けれど、今のあたふたする冬子の姿を見て、許された気がする。
俺、たくさんの人に許されてばかりだな。
そんな温かな気持ちが胸に広がって、ついつい笑ってしまう。
冬子はその様子に戸惑い、がたっと席を立った。
「もう、気持ち悪いわね! ここに気持ち悪く笑ってるロリコンがいるんですけど!」
そう訴えると、その声は予想以上に生徒会室に響いた。
不審な下級生たちの目が、冬子と、俺を見る。
主に、俺を。
「……」
途端に口をつぐんだ。
冬子、余計な事を……!
冬子を横目で見ると、きまり悪そうに、けれど、なんの根拠もなく頑張れ、という応援をくれる。
俺は恥ずかしさで顔が赤くなっているのを感じた。
梨緒が俺を不思議そうな眼で見ている。
毎回毎回、言われるけれど、そろそろ、この話題もお開きにしよう。
俺は、立ち上がり、静かに口を開いた。
そして生徒会の下級生たちに言う。
宣言する。
「俺は、ロリコンじゃありません。」
と。
これにて『俺はロリコンじゃありません。』完結になります。
今までお付き合いいただきありがとうございました!
照岡先生の次回作に御期待ください!
(打ち切りじゃないよ。使ってみたかったんだ)