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喧嘩編 01

「そこの奥行って女のヒトに話しかけると、新しい技覚えられるよ」

そう言って、彼女はテレビ画面に指をさす。

俺たちはとあるゲームをしている。

そんな彼女は、俺の足の上に乗っている。

何故だか良く分からないが。

いや、別に嫌なわけじゃないんだが……

「……よく知ってるな」

「だって、もう二週目クリアして三週目に入ったところだもん。今全クリ目指してるんだよ」

高く可愛らしい声で、俺の足の上で大人しく体育座りをしている梨緒は言う。

「おう、そうなのか。梨緒はゲームが好きだな」

そう褒めると、梨緒は嬉しそうに目を細めた。

そんな様子を見て、俺は微笑ましくて、可愛いと思った。

いや、別にロリコンじゃなんだからなっ。

まぁ、こんな風にしてたら仲の良い兄妹か何かに見えるのだろうが、実は梨緒は人様のうちの妹で、俺は梨緒の兄の友達だ。

梨緒とは小さい頃からよく遊んでやっているから、梨緒はすごく俺に懐いている。

梨緒の兄、啓悟はそれをよく思っていないらしいが。本人は認めていないが啓悟はかなりのシスコンだ。

小さい頃から梨緒は俺の足の上に乗ってくる。もう特等席みたいになってしまっている。

ある日啓悟が「お兄ちゃん赦しませんっ」とか言って梨緒と俺を引き剥がそうとしたら、梨緒が泣き出して「お兄ちゃんなんて嫌い〜!」と言われてしまった。

そのおかげで、梨緒はこうして平和に俺の足の上に座っていられるのであった。

そんなに気に入られているのか……

「進んでるか〜?」

啓悟登場。お菓子とジュースを持ってきてくれたらしい。

「おぉ。さんきゅーな」

「梨緒の分を持ってきてやったんだよ」

低い声で啓悟は言う。

このシスコンが。

「わーい。お兄ちゃんありがとうっ」

「どんどん食べろよー」

そうして啓悟は梨緒仕様の笑顔を浮かべる。

梨緒は俺の足の上にも関わらずもぞもぞと動き、お菓子をとる。

「行儀良く食べろよ」

「はーいっ」

梨緒はにこにこしながらお菓子を頬張る。

「おいしいー」

「さて、オレも食べるか」

啓悟はお菓子を食べ始める。

俺は今手がふさがってるんだよおおおぉぉ。

そんな俺の心情を梨緒は悟ったのか、いきなり振り返ってこちらを向く。

「竹お兄ちゃんも食べる?」

返事をする間もなく、梨緒は俺の口までお菓子を運んでくれた。

うん、良い子だ。

「ちょっと待ったあああ!」

啓悟がその光景を見てヒステリックな声を上げる。

「梨緒、やめなさいっ。お前はもう高校一年生になるんだからもうちょっと女の子としての花をだな……」

「竹お兄ちゃんだけ仲間はずれは可哀想だよ!」

あれ、もう梨緒って高校一年生だったか? あれ。じゃあ今中学三年生? 受験大丈夫なのか? というか、こんなに幼い容姿でもう高一!?

「竹都はいいんだよ、それよりお前、受験勉強しなくていいのか!?」

「なんで今そういう話になるの? 受験は大丈夫だ、って先生もお母さんも言ってたよ!」

ああ、確かに梨緒は頭良かったな。数学以外。

あの数学のテストは悲惨だった……全部記入しているはずなのに四分の一しか合っていないと……

「というか、お前どこの高校に行くんだ!? 電車で行くとしか聞いてないぞ!」

「お兄ちゃんには関係ないことだもん! 別に言わなくてもいいでしょ!?」

あー、というかこれ喧嘩じゃないか?

というか、俺の足の上で喧嘩をしないでほしいのだが。

あ、新しい技を覚えた。

「お兄ちゃんには関係ないだと!?」

ばん、と啓悟は机を叩く。

あ、ジュースが零れる……っ

「オレはお前の将来が心配なんだ!」

なんか啓悟お父さん的立場なのか?

まぁ、確かにこの家には「父」という存在がいない。理由は聞いていない。聞くような勇気も無い。

「もう、お兄ちゃんうるさい! 私の事叱る前に、自分の事ちゃんとやってよね!!」

そして、俺の顎に鈍痛が走る。

どうやら梨緒が俺の足の上から突如立ち上がったらしい。

梨緒は小さいから、丁度梨緒の頭は俺の顎の下だったのだ。

そして、ゴツン……

と、分かったときには俺は意識を失いかけていた。


「……」

啓悟は梨緒を追いかけることもなく、ただそこに座っていた。

ただ、自分の手を見つめていた。

俺はその様子をただ横目で見ていた。

それより顎が痛い。

仕方ない、このまま重い空気のままじゃ帰れないしな。ということでセーブ場所を探す。

一旦戻って、ゲーム機の電源を切る。

それより顎が痛い。


顎が痛いんだ。

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