断罪の誓い
Twitterに投稿した作品をSSにしました。
「あなたの過去の先約とあなたの未来への約束を全て、ワタシに譲るのよ」
紅い一本線の端が鋭く上がる。
「どういうことでしょう……」
「それよ、それ」
白魚のような指先が示したのは、畳についた十本の指。
「分かったかしら?」
スルリと指を撫で口元を隠しても、ぬらぬらと燈に揺れる紅の色は消えない。
「知らないとでも? 今居る者も今在るモノも全て捨ててらっしゃい。あなたの今は私だけのモノになるのよ。それが嫌ならーー」
「分かりました」
培ったものも、築いたモノも。そして、やっと結んだ者さえも。それでも俺には選ぶ余地などないのだ。
約束の担保は「手の指」だけ。丁寧に切り離した『9本の指』は、額物に入れて二人の寝室の壁に飾っている。
そして今宵、指一本分の約束が果たされる。
彼にはもう渡す指はないのだからーー
未だに反抗的な色を宿す闇の色。
もう、遅いのよ。
「やっと、この忌まわしい先約と約束を断ち切ることが出来るわね」と耳元で囁いた。
小刻みに震える手の甲を、私の滑らかな体温が行き来する。
「別れの時よ」
「この指だけーー」
生暖かい床。蒼白の彼。
用意していた包帯を乱暴に巻きつけると、欠けた手で懸命に文字を打とうとしていた。
「さようなら」
取り上げた端末を目の前に転がして、手にした左手の薬指に唇を寄せた。
背後から聞こえる嗚咽。
「もう、もどれないっ」
あなただけが知らない。
愛した女の左手の薬指は、今も空いたままである。




