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萌芽の音
人生の一休みだと言い聞かせ、半年間の休息期間に入った。
音がした日から何も出来ない日々が続いていたけれど、些細なことに喜びを感じる瞬間が増えた。
全てを失ったと思った。
全てが消えたと思った。
そんな音だったから。
一歩進めば百歩下がる感覚。
一歩進めば千歩進んだような感覚。
極端な感覚。
時間の流れと一緒に鋭敏だった感覚も鈍くなり始めた。
モノクロからカラーに。
雑音から音楽に。
音楽から音に。
音から話に。
話から会話に。
モノから人に
人から和に。
亀より遅い速度だったけれど、確実に進んでいた。
進んでいることが実感できれば速さを受け入れることに苦心した。
比較からは何も生まれないことに気付くと速さを認められた。
認めることが増えれば自身を許すことが出来た。
そうして繰り返されていく闇と光の攻防を心に抱えて半年。
「空が綺麗だ」
あの音は新たな旅のスタート音だと思えるようになっていた。




