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Agapanthus

友人というにはまだ遠く、クラスメイトというには近すぎる俺と君。桜の季節に出会って、同じ教室に移動して席は前後。プリントを回す度に揺れる内巻きの髪。


「おはよう」

「おはよ」


 流行りの曲に流行りのYouTuber。話題が途切れることはないけれど、俺と君は恋人ではない。秘密を共有することもなければ、相談をするような間柄でもない。


 ただ一つ、知っていることがあるとすれば。


 挨拶を交わす時に俺の右隣に視線が動くこと。休み時間に会話をする時ですら右隣に意識があることを俺だけが気づいている。


「それでね――」

「うん」

「聞いてる?」

「聞いてるよ」

「ねぇ、そう思うよね?」

「えっ、俺?」

「そう、お前だよ。話聞いてたか?」

「いやいや、急に話題振んじゃねーよ」


 他愛もない。他意もないのはいつも右にいるお前だけだよ。


 一度目の秋には自覚した遅すぎる想い。枯らしてしまうにはあまりにも恋しい花だから。二度目の春を迎える前にと心に決めた。


 十月。趣向を凝らしても、視線の先を変えることは出来なかった。


 十二月。他人を真似てベタな行動に挑戦しても、自分以外にはなれないと思い知った。


 三月。漫画に触発されて可愛らしい便箋を購入してみた。


 けれども。


 なり損ないにもなれなかった紙屑の願いは、三度目の春になった今も引き出しに眠ったままだ。

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