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酒場強制イベント

 ギルドの中は活気に満ち溢れていた。

 内装は右半分が居酒屋みたいなもんで、各テーブルでそれっぽい人達がビールっぽい飲み物を呑み交わしている。その中にはもう六十はいってそうな爺さんもいれば、まだ二十歳にもなってなさそうな少女もいる。老若男女、顔ぶれは様々だ。

 左半分は壁一面の掲示板に紙がビッシリと貼られており、大勢の人達がそれらを眺めている。見たところ、あれがクエストの概要ってところか。うむ、お決まりのパターンだ。テンプレで助かる。

 そして入って突き当たりに受付ってところか。カウンターの向こうには受付嬢が一人、テキパキと仕事をこなしていた。


「オッケー、これでクエスト受注完了。いつも通りクエスト完了時のみ回復アイテムはこっちが1割負担するわ。期限は五日だから、もしクエスト遂行不可能と判断したら速やかにギルドまで来るように。はい、次の人――ってリリィじゃない」


「こんにちは、メイルさん」


「どしたの、こんなむさ苦しいところに…………うん?」


 気の強そうな瞳が、リリィから俺へと訝しげに向けられる。

 歳は俺と同じくらいだろうか。つまりは二十代後半。ポニーテイルに纏めてある髪の色は赤。そのせいで、余計に威圧感を覚えてしまう。

 リリィとはまたベクトルの違った美人さんだ。大人の色気、というか、単に無駄な部分がない綺麗さとでもいうか……女って化粧してるなーって顔が多いが、彼女の場合は素の時点で顔面レベルがカンストしているのが俺も分かった。

 あとどうでもいいが、それ以上に黒を基調にした洋服から主張する二つのお山が目を引く。

 ……うん、とても大きい。ぱつんぱつんだ。

 アレだよね、おっぱいって変に露出してるより、服の下からめっちゃ出っ張ってる方が興奮するよね。


「――どこ見てんのよ、ガキ」


 と、ゲスなこと考えてたらドスの利いた声で我に返った。

ガキって誰のことかと思ったが、そういやこの世界では十歳以上容姿が若返っていることを思い出す。


「へ? ああああいや別に見てない、どこも見てない、です、はい」


「ねぇリリィ、何この子。見ない顔だけど」


「…………」


全力で無視され、彼女はリリィへと訊ねる。……いいよ別に、女に無視されるのは慣れてるし……


「えっと、ちょっと理由あってウチで働いてもらってるんです。何でも、お金も宿もないみたいで……」


「お金も宿もないって……どこから来たのそいつ」


「さぁ……?」


 と、リリィは首を捻りつつ耳打ちしてきた。


「――あの、こことは違う世界って言わない方がいいんですよね」


「――一応それで頼む」


「――分かりました」


 こそこそ話をしている俺達に、いよいよ受付の人の目が完全に不審者を見るそれになっていた。


「…………そんな怪しさ爆発してる奴、よくラルヴァスのおっさんが店に置くこと許したわね。ねぇ、リリィ。変な弱みでも握られたんじゃないわよね」


「あはは……でも、通りすがりに危ないところを助けてもらったので、悪い人ではないですよ」


「他人の胸見て鼻の下伸ばす程度にはいやらしいけれどね」


「いやいや関係ないだろそれは」


 大きな胸があれば見るだろ普通。それは男にとって呼吸するなと言ってるに等しいぞ。


「はっ、まぁいいわ。見られて減るもんじゃないし」


 あ、そう……

 変なところでサバサバしてるな。初対面ではビビったが、そこまで怖い人ではなさそうだ。それこそリリィの親父さんみたいだな。


「で、今日は何しに? ――って、ここじゃクエスト受けるか、向こうで酒飲むか以外にすることないけれど」


「特に用事があったわけじゃないんですけど、ユーヤさんにこの町を色々案内してるんです。まだ色々分からないことが多いみたいで」


「ユーヤ?」


「あぁ、俺の名前だよ。時津雄哉」


「ふぅん、変わった名前」


「だろうね」


 西洋風にユーヤ=トキヅ、とでも言うべきだっただろうか。あんま変わらんか。


「ま、折角だし自己紹介してあげるわ。私はメイル=ストラ。ここで受付嬢をやっているわ。一応よろしくしてあげる」


「こちらこそ。早速なんだけど、ここのルールってどうなってるんだ?」


「ルールってほどのもんじゃないわよ。そこのクエスト一覧から適当に選んで、ここで受理して、期間内にやることやって戻ってきたら報酬ゲット。クエスト完了した場合のみ使ったアイテム一割負担してあげるから、ちゃんと計算しておくことね。一応クエストは自由選択だけど、百万イェール超える高額クエストに関しては今まで攻略したクエスト履歴を見て、こっちが許可出さないと受けれないから。――まぁそんなところね」


 ふむふむ。流石に初っ端からそこまで高額クエスト受ける気はないけど。多分審査があるってことはそれだけ危険なんだろう……なんか適当なクエストがあればいいんだが。


「なるほど……なぁリリィ、ちょっと見てきていいかな?」


「はい。あ、でもご飯の支度しないといけないんで、十分くらいで戻ってきてくださいね」


「おっけー」


……ん?

 なんだろう、何か今違和感が…………


……………………


…………ま、いっか。


「さてと――――あ」


そこで重大なことに気付いてしまった。

俺、文字読めねぇじゃん。

しまったな……数字は普通に読めるが、肝心のクエスト内容が解読出来ん。

ここで全く文字が読めませんと、リリィはともかくメイルにまで知られたら若干厄介なことになりそうだ。自分が反対の立場だったら、そりゃまぁ、怪しむわな。急に異世界がどうこう言って文字すら読めんとかほざく奴が現れたら。


「ん〜〜〜」


その辺のクエストを覗き込む。俺が知るどの文字とも違う。象形文字に近いような気がするが、生憎考古学は門外漢だ。

そもそも何だよこれ、赤ちゃんが適当に書き殴ったようなのは――

と、紙に書かれた文字を指で軽くなぞった、その時だった。


「っ!?」


指先に、淡い光が灯る。

刹那、俺の脳内に『何か』が濁流のように雪崩れ込んできた。


「痛、ぅ……っ!?」


思わず頭を押さえる。

だが、それも数秒のこと。

痛みは急速に引いていき、数回の瞬きの内には最初からそんなものなかったかのように健康体に戻ってしまった。


「な、何だ今の――って、うおっ!?」



『イフニ川の主、アグネギの生け捕り。:報酬三十万イェール』


『【人探し】オグリッゴ湿原で行方不明になった息子を捜索しています。報酬:百五十万イェール。遺留品発見者には五十万イェール』



『五つ葉のトリフメを見つけてくれ。※生息地はメキル高山。報酬:五十五万イェール』



『【指名手配】ジゼル=ボールドウィン。罪状:ミシズ領主殺害。報酬:二百万イェール』



 お、おおおおおおおお?

 読める! 読めるぞ!!

 今まで一文字も読めなかったのに、唐突に全てが日本語のように解読出来るようになった。まさに気分はム○カだ。

 て言うかマジでどういうわけだ。俺何もしてないぞ。

 これも魔法の賜物なのか……? 分からん。

 にしても、本当に色々クエストがあるんだな……街のお使いレベルから、字面的に強そうなモンスターの討伐レベルまで、種類も様々だ。


「そうねぇ……貴方だったら、これくらいのクエストからこなしていくのが妥当なんじゃないかしら」


 掲示板を眺めていると、いつの間にか隣にいたメイルがとあるクエストを指差してそう言った。

 って――


「飼っていた犬を捜しています。報酬:五百イェール」


 へぇ……この世界にも犬はいるのか。写真は無いから、紙には犬の似顔絵が描かれてある。ふむ、顔形から見るにプードルっぽいな。

 じゃなくて!


「いやちょっと待てよ、流石にそれは安すぎるだろ」


「あら、捜してる方は必死なのよ? 何なら依頼人と値段の交渉してもいいけれど。その仲介も私達の仕事の一つだし。因みに依頼人は十歳の子供だから」


「…………」


 そんなん値上げ交渉出来るわけないだろ。俺は鬼か。


「確か百万超える奴は何個かクエストクリアしないといけないんだっけ」


「ええ。……まさかいきなりそんな大きいのから受けようと思ってるんじゃないでしょうね。言っとくけど数万でも絶対に安全なクエストなんてないわよ。どのクエストでも言えることだけど、下手打って怪我どころか命を落とすケースだって稀じゃない。あんた見るからに素人なんだから、もっと真剣さを持ちなさい」


「お、おぅ……」


 マジな顔で警告するメイルに、思わず圧倒されてしまう。

 考えてもみれば、彼女の言っていることは何も間違ってはいない。

 ネトゲで考えてみると、今日始めたレベル1のヤツが適性レベル100のクエストに特攻しようとしてるようなもんだ。

 とは言えゲームなら適性レベル100のクエストなら、レベル100近くになるまでシステムの仕様で選択出来ないものだ。

 しかし、この世界では違法とは言えそれが出来てしまう。


「…………」


思わず息を飲む。

自由度が高すぎるのも考えものだな。

 一つ考慮すべきところがあるとすれば、俺のステータスがこの世界での経験値相応なのかということだが。


「あの、あんまり危険なのは私からも……ユーヤさんが怪我したら、私も悲しいですし……」


「ちょっと、リリィ泣かせたら許さないわよ」


「わ、分かったからその怖い顔やめろって……」 


 今日一番の恐ろしい顔でメイルが俺を睨んでくる。親父さんといいメイルといい、リリィに悪い虫が付かない理由が分かった気がした。

 にしてもなぁ、もうちょっと手ごたえのありそうなのが欲しい。


「んー……ん? なぁ、このクエストなんだけど」


「どれ? ……『リリウム‐ナーリヤ間の街道に巣くっているヴォルックの駆除。目撃者の証言から成長したヴォルックは八体なので、その全ての討伐を以てクエスト完了とする。報酬:八十万イェール』。……これがどうかしたの?」


「いや、こいつらなら今日の昼間俺が全部ぶっ飛ばしたんだけど」


 途端に、メイルの怪訝な表情が濃くなる。


「はぁ? 寝言は寝て言いなさい」


「マジだって。リリィが証人だぜ」


「リリィ、脅されてるんだったらちゃんと言いなさいよ」


 ひでぇ言われようだ。どんだけ鬼畜だと思われてんだよ俺は。


「いえ、ユーヤさんは嘘なんて言ってないです。と言うか、ヴォルックに襲われたところをユーヤさんに助けられたんです」


「本当に~?」


「疑り深いなぁ」


「だって、ねぇ。ヴォルック一体討伐するのすら、駆け出しの冒険者では歯が立たないレベルよ? それを八体……せめてクエスト受注してからだったら問答無用で信じたけれど」


「そうなのか?」


「えぇ。今みたいに口だけでクエスト完了しましたって言っても誰も信じないでしょ。だからクエスト受注の時に契約魔法をかけるの。そうすると、対象となった人がクエスト完了したら自動的にこの契約用紙に紋様が浮き上がってくるわけ」


 そう言って、メイルが一枚の紙をひらひらやって見せてくる。

 なるほど。ネトゲではクエストのことについて深く考えなかったけど、リアルではそういうカラクリになってるわけね。


「リリィも証言してくれてることだし、このクエストクリアしたことにならないのか?」


「うーん、捜索系のクエストならともかく、討伐系のクエストとなるとねぇ。しかもこれ王都直属のクエストだから、適当な処理したら後々面倒なのよね……」


「そこを何とか」


「貴方がポッと出の胡散臭い人じゃなかったら、もうちょっと斟酌出来たんだけれど」


「あのなぁ……」


 と、その時だった。

背中に軽く怖気が走った。

殺気、とでも言うのだろうか。今まで感じたことのなかった感覚に、しかし俺の体は無意識の内に動く。


「ッ――!」


反射的に振り向き、俺は背後から放たれた『それ』をはたき落した。

正確にはなんか危機を察知した瞬間俺の周りにオーラみたいなのが出て、その範囲に入ってきた『それ』が勝手に落ちたのだが……まぁいいだろう。

ナイフ、だろうか。束の部分が異常に短く、両側に刃がある。確かダガーナイフって種類だっけ。とにかく誰かに向けて投げていいものではないのは確かだ。


「おい、今の誰だ」


 思わず激昂しそうなところを抑えつつ、俺は振り向いて辺りに睨みを利かせる。

 果たして、犯人はあっさりと俺達の前に現れた。


「ハッ! 怒んなよ、その程度のことで。ちょっとした挨拶じゃねぇか」


 酒場の人混みから、一人の男が歩み寄ってくる。

 歳は高校生くらいだろうか。短い金髪を逆立て、だらしなく服を着崩し、いかにもチャラついたその風貌はまさにDQN。

 厄介なのに絡まれたな……ていうかやっぱどこにでもいるもんだな、こういうの。

 元の世界なら、この時点で俺は萎縮して何も言えなくなってしまっていただろう。

 だけど、今の俺は自分でもびっくりするくらい自信を持って突っかかることが出来た。

 まぁ何と言うか、実際ここ現実世界なのか実感湧いてないし、どっちかというとまだ夢を見ている気分ですらあるのが本音なのだが。


「挨拶だと……? 頭沸いてんのかお前」


男はなおも飄々とした態度で、挑発的な目付きを向けてくる。


「ヴォルックを八体も殺ったんだって? ハッ! 見るからにヒョロそうなガキがホラ吹いてるって、ここにいる全員が思ってたぜ」


「あぁ?」


「俺はそんな皆の気持ちを代弁したわけだ。それだけの実力がありゃあ、今のを防ぐなんて造作もねぇだろ? ま、どっちにしても急所を外してたが」


……なるほど。言いたいことは大体分かった。

こういうの何ていうんだろう、新人いびりってヤツか? 新参に向かって高圧的な態度取る奴、どこにでもいるよなぁ。

さて、ここはどういう対処をすべきか……

 男としては売られた喧嘩は買いたいところではあるが……

 でも後ろにリリィいるしなぁ……


「……」


 チラリと背後のリリィを盗み見ると、案の定怯えた顔でこちらの様子を窺っている。

 となれば、非常に癪だが帰るか。て言うかそろそろ帰って飯作らないといけないんだっけ。どっちにしてもこんなところで時間食ってる場合じゃなかったわ。

 そう言うものの、相手が無事に解放してくれるかは別として、だけど。


「てなわけだ。これ以上ボロが出る前にとっとと家に帰りな。ここは手前みてぇなガキの来る所じゃねぇんだよ゛っ!?」


そこまで言ったところで、彼の後頭部が何者かによって大きく叩かれた。

 メイルだ。

えらくご立腹といった表情のまま、腕を組んで仁王立ちしている。


「ねぇ、クロード。今度ここでいざこざ起こしたら出禁だって言ったわよね?」


 怒気を含んだ声で、彼女は衝撃に頭を抱えた青年――クロードを睥睨する。

 ……つーか、メイルって今の今まで俺の隣にいたよな?

 クロードと俺の距離は控え目に見ても五メートルかその辺は離れている。

 そんな彼の背後を一瞬で詰めるなんて……


「…………」


 うん、彼女は怒らせないでおこう。俺の本能がすぐさまそう告げた。


「~~ってぇ……」


 余程えらい勢いで叩かれたのだろうか、クロードが涙目になりながらようやく顔を上げた。

 残念ながら当初放っていたチャラチャラオーラは最早微塵もない。


「クソッ、いきなり何すんだテメェ!」


「テメェ……?」


 瞬時に般若顔になったメイルに、クロードが更に情けなく萎縮する。


「……いやだってよ、ぶっちゃけメイルだって信じてねぇだろ、コイツが言ったこと」


「そうだけど、アンタがここで暴れんのとは話が別」


 ナチュラルにディスられたが、今突っ込むと話がややこしくなりそうなのでスルー。


「まだ暴れてねぇだろ!」


「『まだ』ね。前みたいに床に穴開けられたりした後じゃ遅いのよ」


「ありゃ向こうが悪ぃ。ウチのクラスタを馬鹿にする奴は死刑って決まってんだ」


「本気で出禁にされたい?」


「だから待てって……そもそもはチョーシこいてたコイツのせい――」


「何責任転嫁してんだよ」


とりあえず今の会話で、コイツがしょっちゅうトラブルを起こす問題児だということは分かった。

ますます厄介だ。DQNに関わってるとこっちまで不幸になる。

絡まれた時は頭に血が上ってしまったが、なんかもう冷めた。

 そういうわけでここはとっとと帰るに限る。


「そんじゃ帰るか、リリィ」


「え? いいんですか? だってユウヤさんがヴォルックをやっつけたのは本当なのに……」


「なんかもう疲れた……それに、時間的にもう晩飯作らねぇといけねぇだろ」


「あっそうですね。じゃあユウヤさんがいいんなら……」


「おいコラ何トンズラしようとしてんだテメェ」


と、そこでクロードが肩を掴んできて、俺の帰宅を阻止する。

え〜何コイツ超めんどくせぇ〜


「何だよ折角こっちから引いてやってんのに。まだなんかあるのか?」


「引いて『やってる』だと? 誰にモノ言ってんだオイ。アァ?」


「なぁメイル、コイツ何とかしてくれよ」


話にならないアホに代わって、メイルに助けを求める。

しかし――


「知らないわよ。男だったら喧嘩売られたんなら買えばいいんじゃないの? ただしギルドの外でね。中で暴れたら殺すから」 


「マジかよおい」


「私だって暇じゃないのよ。後は当人同士で解決してね。それじゃ」


 そう言ってメイルは受付へと戻ってしまう。異世界初心者に対してなんて無慈悲なんだ。

 と、そこで俺は気付く。

 ギルド内の人達の視線が、俺たちの方へと集まっていることに。


「またクロードのヤツ新人に喧嘩ふっかけてんのか」


「相手も運が悪ぃこった」


「ま、でも変に調子に乗って痛い目見る前にボコされた方がいい薬になるんじゃねえか」


「ヴォルック八体殺ったっつー話が本当ならボコされるのはクロードの方だがな」


「ハッハッハッ! それもまた面白れぇ展開だ」


「さー張った張った! 今んとこオッズはクロード1.05倍、新人30倍だよ!」


 その中に仲裁しようとするような輩は一人もいない。誰もがこの喧嘩の行方を楽しんでいる野次馬ばかりだ。

ギルドってこんな奴らばっかなんかい。


「ゆ、ユウヤさん……」


 様々な好奇の目に晒され、リリィには怯えた様子で見つめられ、流石の俺も腹を決める。


「……ちょっとだけ待ってもらっていいか?」


「え?」


「すぐ終わらせるから」


 決まった……人生で一度は言ってみたかった台詞の一つだ……

 場合にはよっては死亡フラグだが、まぁただの喧嘩で死にはしないだろ。

 ……でもこいつ普通にナイフぶん投げてきたしな。

 若干不安になってきた。


「ハッ、ようやくその気になったか? ビビリちゃんよ」


「ついさっき女相手にビビってた野郎が何言ってんだ」


「アァ!?」


「表出ろよ。実力、見せりゃいいんだろ」


 こうなりゃ自棄だ。

 RPGの強制イベントみたいなもんだと思おう。

 仮に倒してしまったところで、こんなうるさい野郎は仲間にはいらないけど。


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