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ハザマのセカイにて



「…………?」



 …………あ、れ?

 ここは……どこだ……?

 目を覚ますと、変な場所にいた。

 周りには何もない。さっきまで路地を歩いていた筈なのに、家も電柱もブロック塀も街灯もない。

 ついでに言うと、地面もない。夜空もない。

 上も下も分からない。

 月もなければ太陽もない。光源となるものは何もない。

 だが完全に暗黒というわけではなく、ほんのりとした明るさがどこまでも広がっている。

 そんな不思議空間に、俺はぷかぷかと漂っていた。


「えっと……………………」


 状況判断を開始して十秒。ようやく一つの可能性にブチ当たる。

 そうか、これ、もしかしてアレか。死後の世界ってヤツか?

 そりゃ空から落ちてきた人とモロにぶつかったら死ぬよなぁ。

 飛び降り自殺で下に人がいた場合、下になった人って落ちてきた人のクッションになって大体死ぬってどっかで聞いたことがある。まぁ、さっきのが自殺かどうかは知らないが。

 痛みとか何故か感じないから、どこをぶつけたのか全く思い出せないが、致命傷であったことは間違いないだろう。

 ……って、それで済ませていいのか?

 マジでどこなんだよここ。

 こんな所でこの先ずっと意識があるなんて嫌だぞ。5億年ボタンかよ。

 そりゃここじゃないどこかに行きたいとは思ったけど……なんかこう、もっとあるだろう。


「おーい!!!」


 叫ぶ。


「……………………」

 返事、なし。死後の世界であるなら、神様なりなんなり出てきてほしいんだけど。

 そしてもし転生してくれるなら、今度こそ平均値以上の顔でお願いします。

欲を言うなら魔法使い放題のチートもおまけでつけてほしい。

 あ、それ以前に人間として生まれ変わらなくちゃいけないか。

 ……まぁ、別に犬とか猫でもいいけど。もう人間は疲れた。

 なんてしょうもないことを考えていた矢先のことだった。


「…………す……け、て………………」


「はい?」


 か細い声。だが、確かに聞こえた。

 周りを見渡すが、やはり誰もいない。無がどこまでも続いているだけだ。


「おーい! 誰かいるのかー!?」


大声を張り上げるものの、返事らしき返事はない。

無限に続く『無』に俺の声は虚しく吸い込まれていく。

 おいおいおい……ただでさえ意味分かんねーのに、心霊現象とか勘弁なんだが。

 俺ホラー苦手なんだよ。

 困惑していると、また声がした。


「このままじゃ……世界は…………」


 今度はさっきよりハッキリとした声。

 女の子の声だ。そして相変わらず姿は見えない。


「誰だ? どこにいるんだ? て言うかここはどこなんだよ」


 どこかの誰かに疑問を投げかける。すると、


「お願い……貴方、しか……」


「はい? て言うか、アンタどこにいるんだ?」


「……界の方は、もうダメ…………れ以上…………しては……」


「もしもーし」


 会話が成り立たん。相手が何を伝えたいのか全く不明だ。

 何だか非常に切羽詰まった様子なのは分かるが、だから俺にどうしろって話だ。

 こちとら生きているのか死んでいるのか、自分でも分からん身だぞ。寧ろ俺をどうにかしてほしいんだけど。

 鈴を鳴らすような声で、一方的な会話は続けられる。


「……こうなったら、仕方ありま…………貴方を…………力を使って、あちら側へと……」


「あちら側って、どちら側だよ」


「もう、私には………………だから…………」


 何勝手に話進めてんだ。こっちの言うことも聞いてくれないだろうか。

 ん? あれ? なんか体全体が光に……


「って、うおおおおっ!?」


 ヤバい! 消える! 体が消える!

 待て待て待て待て! どうなるんだこれ! もう俺死んだんじゃないのか!? まだ続きがあるのか!?


「おい! どうなってんだよ! 俺をどうす――」


 抗議の声は、最後まで紡がれることはなかった。体が完全に消えてしまったからだ。

 再び全てが闇に包まれる。



 そして、再び意識は深い深いどこかへと落ちていった――――




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