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Attack of Killer Ants (2)



その日のキリーの仕事は何事もなく進んだ。

クロスニカ二丁目で七つの惑星に住む二つの家族の居住を確認した後は、通常空間を慣性航行しながらプライベートタイムに入る。

測量航宙士は、一日10時間以上の“労働に従事しない個人的な時間”を取ることを義務付けられている。

過酷な宇宙空間で孤独に働く彼らの心身の健康を守るためには何よりもリラックスできる時間が大切として、連合の公務員法で定められたものだ。

問題が起きたのは夕食時だった。

「おいマーヴ、俺はチキンソテーをリクエストしたと思ったんだが、これはどう見てもポークカツだよな」

湯気を立てる熱々のポークカツレツ、しゃきしゃきサラダにはイタリアンドレッシング、スープはじっくり煮込まれたコンソメ、焼きたてのように柔らかい白パンにはまろやかな風味のバターを添えて。

文句なしに美味そうな夕食だ。食後には熱いコーヒーだって待っているに違いない。

だが、今日キリーが要望したのはチキンソテーに中華風ドレッシングのサラダだし、ジャガイモのポタージュにとうもろこしパンだった筈だ。

『おや、そうでしたか?』

事も無げにマーヴは言う。

『もう温めてしまったんですからそれを食べてください』

新しい食事を出し直すつもりはさらさら無かった。

宇宙空間においては物資が何より大切で、米一粒水一滴酸素一分子とて無駄にすることは許されない。

だから頼んだものと違うという理由でこの一食を捨ててしまうことなど認められない。

それはキリーが一番よく分かっている。

しかし、リクエストが違えられた不満とそれは全く関係の無いことだ。

「マーヴ、お前のミスなんだからおまけでビールを出してくれるくらいの気遣いを見せてもいいんじゃないか?それこそが優秀な人工知性ってもんだろ」

『私はミスをしません』

きっぱりとマーヴは言い切った。

『ミスをするのはいつも人間です』

すかさずキリーが言い返す。

「いいや、俺は覚えてる。お前はこの前俺の朝食のシリアルにミルクを掛けるつもりでオレンジジュースを掛けた。忘れないぞ、三日前の午前8時45分だ。記録もある」

『器の小さい男ですね』

すっぱりと反論を切って捨てるや、マーヴは都合が悪い時のだんまりモードに入る。

ガシャリと冷蔵庫がロックされた音がした。

よく冷えたビールで一杯というキリーの野望は費えた。

おまけにコーヒーメーカーまで止めてくれたおかげで、食後の一服もお預けになった。

挙句ご丁寧にオーディオやテレビの受像機の電源まで切ってくれており、大層退屈したキリーはその夜9時にはぐっすりと熟睡してしまった。





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