二曲目 〜再起の試練1〜
黒は白へと変わり、また黒へと堕ちる。不思議な空間をただただひたすらに、歩いている。
「…あれ?あそこだけ、極端に明るい?」
選択肢などない。可能性に向かって進むだけである。
その時だった。
キィィィィィィイイイン!!!!!
急な閃光が視界を襲う。とっさに目を閉じて惨事を躱す。恐る恐る目を開けると、"何もない世界"が終わり、辺りは何処かの森のような風景になっていた。
「…サイレントは突破したか。流石はkillerね。」
声の方向を追う形で後ろを振り向くと青と白を組み合わせた可愛らしいエプロンドレスを着ている幼女が1人。
「サイレント?キラー?何のことだ?俺に関してわかることがあるなら教えてくれお嬢さん。」
「貴方本当に何も覚えてないのね…。私の役目はここの管理、あなたについて教える事は私の管轄ではないわ。ただ…そうね、貴方に本当に力があるのならヒントくらいはあげてもよくってよ。」
幼女が不敵な笑みを浮かべる。
「本当か!どうすればヒントをくれるんだ!?」
幼女が自分の胸を指差して続ける。
「簡単な話。私に勝てばいい。あら?…そういえば貴方、オーディオはどうしたの?」
彼女が何を行ってるのか理解できない。
「ま、いっか。貴方ほどの実力があれば私のオーディオでも十分な力を引き出せるはずよ。ほら!」
幼女がネックレスを投げてよこす。とても綺麗なサファイアのような鉱石がついている美しいネックレスだ。
「それじゃあ………いくわよ。私はアリス。アリス・エル・マータよ!!」
幼女の背後の森から静かに曲が聞こえ始め徐々に音量を増していく…!
曲名 厭世アリス
内容 フィールド及び戦闘BGM
媒体 ???
構成難度 AA
BPM 約172
考察 媒体についてはオーディオ型ではない。
「驚いた?機器や楽器による音楽構成のみが媒体ではないのよ。この世界の一握りの者は私と同じような"オーラ型"を扱うことができるわ。テレパシーのような感覚で相手の脳に直接音楽を再生する危険なタイプなの♪中毒性が高いから気をつけてね!」
先程のおしとやかな顔立ちは一変、戦いに目覚めた強者の顔がそこにはあった。片手に握りしめた鋭利なナイフをためらう事なく振り回し、襲いかかってくる。
ヒュン!ヒュン!ビュン!!
必死に躱す。躱すというか、逃げる。すれすれに空を切る音が何度も聞こえる。完全にトラウマものである。
「早くして!今の貴方に興味はないわ!killerを出しなさい!!絶対殺してやるんだから!!!」
どうやらキラーとは僕の事らしい。状況的に察せられるのは僕が音楽を扱う状態、つまり戦闘態勢に入った僕と戦いたいようだ。
「っ!!わっかんねぇ!!これどうやって使えばいいんだ!!!」
状況を打破するにはアリスから受け取ったオーディオ型媒体のネックレスから音楽を構成するしかない。答えはわかるが、方法が皆目見当もつかない。
「言わずとも体が教えてくれる。いやでも体が覚えているはずよ。」
喋っていてもナイフを振る手は依然止まらない。
……刺激がないとダメか。
「Wonderland.(不思議の国)」
技名 wonderland
内容 景色が楽園のように変わり、視覚的な癒しを与えるが、脳に致命的なトラウマを植え付け、再起不能にする。
ゾクッ…!
なんだっ…これ!?
「うわぁぁぁぁああぁあ!!!!やめてくれっ!!!」
?「お前があそこで俺たちと一緒に来ていれば、こんなことにはならなかったのに!!!」
?「killerもその程度か…」
?「見損なったよ。」
「あぁぁあああああ!!!!」
何も考えられない。考えたくない。ヤメテ。ハイッテコナイデ。コワレル…。
プチッ…。
「終わった…か。残念。killer君。」
カッ!!!!!!!!!
「!!?」
曲名 ねぇ、壊れタ人形ハ何処へ棄テらレるノ?
内容 暴走。意図無し。
媒体 オーディオ型
構成難度 SS(推定)
BPM 188
考察 狂気。物量で押していく荒い戦い方になる。体力消耗による非戦闘損耗が激しくなる。
ブワッ!キィィン!!
速い…!?
先程までの形勢は明らかな変化を帯び、状況は一変する。
「さァ、こコからダ。」
唖然とするアリスだったが、間も無く殺意の湧いた目に戻る。先程と違う点と言うならば、若干楽しそうにも見受けられるという点である。
「……そうこなくっちゃ。そうこなくっちゃ!!!!!!」
両者間髪入れずに蹴り出し、瞬間で距離を詰め鍔迫り合う。
ギィン!!!
火力はkiller。持久力はアリス。
まだ、決着はつかない。
to be continue…