1曲目 〜音楽戦士〜
※この物語は二次創作です。既存の楽曲を元に制作されています。また、問題が生じた場合直ぐに削除します。
音楽。それは音による芸術である。その文化は長い時間の中で洗練され、より多くの人に多大なる影響を与えた…。
「おっと、話に夢中になるとかけ忘れてしまう癖があってね。そう、BGMを忘れていたよ。プロローグとなる私の解説の間でも、BGMをつけるだけで話の中にも深い味わいが生まれ、理解が深まる。この世界を旅する上で、貴方がたも"読み方"を知っておくべきだと思うんだ。まぁ、見せる方が手っ取り早い、見て仕様を学んでくれ。」
謎の男が懐からノスタルジックな懐中時計を取り出し、時計の後ろのスイッチのようなものにそっと触れると、1曲、静かに流れ始めた。
曲名:ーCaliburne story of the Legendary swordー
内容:プロローグイメージBGM
媒体:オーディオ型
BPM:190
構成難度:S級
備考:曲名について、caliburneとは聖剣エクスカリバーの別称である。内容について今回は単にBGMとして扱われる為特別な効果を表示しない。この世界では音楽を媒体に戦闘能力を得られ、その性質は曲の雰囲気や曲名、MV等に依存する。媒体について、音楽を構成する媒体は3種類ある。オーディオ型は最も汎用性が高く、広く世界に普及している。BPMは1分間に刻むテンポ数を指す。構成難度とは曲を構成するための難易度を示しており、BPMや演奏難度、曲調、スケール等多くの構成要素の集合体で考察されるもので、厳密に決まった定義はないものの実力に相応な構成難度でしか曲を構成できないのは言うまでもない。備考欄は補足に用いられる。
「最初は慣れんかもしれんが、次第に慣れてくれると嬉しい。では、BGMを流したところで、話を再開しようか。」
バローク歴1016年。突如空より現れた謎の黒き龍群の猛烈な咆哮は瞬く間に世界を恐怖の底へと陥れた。龍が一度息を吐けば、広い地域が火焰に飲まれた。多種多様様々な武力を行使してもびくともしない龍群に対し、最早なす術無しと悟った先人達であったが、ある時を境に世界に転機が訪れる。おおよそ風貌は中世バローク(推定250年ほど前)を彷彿とさせる様なお洒落な古風衣服を纏っていた。手に美しいヴァイオリンを持ち、物静かなオーラを放った少年がこう言った。
「音楽の力は龍をも破る。音楽は調和しうる。音は旋律する。音は未来を刻む。」…と。
人々は半信半疑である。が、事を収束できる手段はない。猫の手も借りたい、まさにそんな状況であったから、静かに結末を待った。
…少年が奏でた音楽によって鎮静化された龍達は後に目を覚ましたが、その眼からは既に敵意を感じなかったと言う。
事態は収束したのである。しかし、人々は暫くの間不安を引きずる事となる。存在しうるはずのない"龍"という存在が突如現れ、それが何処から来たのか?何処で産まれたのか?多くの謎が起き、1つも解明出来ずにいるからである。
また、龍が起こした行動によって刹那的に育まれた混沌。植えつけられたトラウマはそう簡単に消し去る事は出来ず、またいつ来るかわからない脅威に怯えなければならない日常に不安は募る一方であった。
同時期、当時のバロークを象徴する巨大国家サラサーティア国の女王メロディーは事態を重く受け止め、人々を少しでも安心させる為に龍に効果的であった唯一の対抗手段である"音楽"の研究を急がせ、研究結果をまとめた"音楽滅龍方"という本を出版した。本には音楽を媒体とした武器の構想が描かれていたが当時の技術で本に書いてある様々な音楽武器を実現する事は不可能だった。が、幸いその先1000年の歴史の中で同じ事態が起きることはなく、その間に音楽武器は日常的な利便性を交えて実現し、人々の生活を豊かにする音楽アイテムが多数生まれた。また、この頃にはすっかり人々のトラウマも消え失せていた。
「ここまでが、この世界が今に至るまでの経緯。…おっと、そろそろ時間のようだ。私が君に教えてあげられる知識は今の所この程度だ。次会うときにはもう少しラフに話せるといいな…。そレ……また…おう。」
男は消えた。だけではなく、音と景色も消えた。
とても静かで心地いい。
とても静かで心細い。