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ジャックと時計塔  作者: ろんぐ
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ハロウィンがやってきた、そろそろ家に帰ろうか。

やった、僕が最後だ! 飛び出して驚かせたい気持ちを抑えて、見つかるその瞬間までのこの時間にドキドキと心が弾みます。

「やあ、見つけたぞ! ジャック、キミが最後だ!」

 笑顔の管理人さんに促され、ジャックは木箱の上に座りました。

目の前は円形に切り取られた、夜の街が広がっています。またひとつ、時計塔から帰ってきた子どもの家でしょう。暖かな明かりが灯りました。

 夜景を背に、ジャックの頭上に杖を掲げて祭司様が祈りを唱えました。青い眼をつぶって祝詞に耳を傾ければ、肩に温かなぬくもりを感じます。

「ジャック」

 後ろから聞こえる声に、管理人さんが自分の両肩に手を添えているのだと思いました。

「今度キミが産まれてくることを、楽しみに待っているよ。そうしたら、またかくれんぼをしよう」

 そうなのです。ジャックはじつは、産まれてくることのできなかった子どもの魂なのです。

この町の10月31日は、未練ある子どもの霊と、仮装した子どもたちが混じり合い、かくれんぼをする日でした。子どもたちは一年の健康の祈りを受けて家に帰り、または、生まれ変わるための祝福の祝詞を受けて、未練を祓うのです。

 ジャックは柔らかな笑みを浮かべ、すっと空気へ溶けるように消えていくのでした。


*     *     *


さて、時は流れて町には今年もハロウィンがやってきました。

時計塔は今日も12時の昼を知らせる鐘を鳴らし、新しい時計塔の管理人の誕生を祝いました。老いた管理人に引き継ぎ、町の若者が立候補したのです。

 最初の来客は、コンコンと軽くドアを叩く音でした。扉を開けば、思い思いに仮装したおばけたち。トリック オア トリートの合唱が響きます。

「さあお菓子だよ、おばけさん達。4時までには時計塔の中に入って、かくれんぼの準備をしておいでね」

 はちみつの飴を詰めた袋を渡しておばけたちを見送ります。

「よし、頑張るぞ。ハロウィンが初仕事だ」

 管理人の名前はレナート。やわらかな蜂蜜色の髪をした、青い眼の青年です。


最後までありがとうございました! ぜひコメントなどなど、ありましたらよろしくお願いします。

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