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異世界指令「転生して歴史を改変せよ」  作者: 小津敬一郎
第二章 英雄ベンヌを補佐し戦争を勝利に導け
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二人の暴君

 第一次人魔戦争。史実上では人間側が勝利し、悪魔は根絶される。

 その戦争の多くの戦いで勝利した英雄、ベンヌ。

 彼女を補佐し、史実を変えずに次に繋げよ。


 頭の中でそう鳴り響いた。

 人の歴史は戦争の歴史だが……俺の元の世界に悪魔はいなかった。

 果たして、死なずに戦えるのか。FPSのレーティングは地を這うレベルだ。


「英雄ベンヌを補佐し戦争を勝利へ導け!」


 ここは……学校。周囲の状況からして小学校だろうか。

 ただ、毎日を消費していただけだが、この身体の記憶は……


 暴力だ。

 見てくれが悪いと、クラスメイトに茶化された次の瞬間にはそいつは宙を舞う。

 ラインフィナッツ北小学校の暴君、ヴィオス。それが俺だ。


 ん?ラインフィナッツ?

 確かに(ラック)はCにしたはずだが……中央都市スタートじゃないのか。


 謎はすぐ解けた。ラインフィナッツには二つの小学校があり……

 向こうの小学校にベンヌ・アーランという生徒?児童?がいる噂を聞いた。

 彼女は俺と同じく暴君と呼ばれていて、その高名だか汚名はいくらでも入ってくる。


 接点は?焦るんじゃない、中学校は同じになる筈だ。


 とりあえず、中学校に入学してからが、今回のスタート地点らしい。

 時間の流れが一気に遅くなる。


「さて、この学校に暴君は二人も要らないわ。」


 そう、俺はベンヌに呼び出しをくらった。

 さて、この状況。どうするべきなのか。


「ヴィオス。私の配下になりなさい。」


 高圧的な少女だ。

 俺と同じく暴君と呼ばれているが……美人だ。

 俺の役目は、英雄ベンヌを補佐する事。

 なら答えは一つだ。


「わかった。君の配下になろう。組織の頭は美しくなくては。」


 そう従うとベンヌは目を大きく見開いた。


「へえ、意外ね。随分な肩透かし。」


 そんなやり取りを経て、俺はベンヌの配下となった。

 当然、同じ小学校だった奴らからは酷いバッシングを受けたが……

 知らん。お前らの事情は知らん。勝手にパシられてろ。


「ヴィオス。あなたも騎士団に入るの?」


 そのつもりだぞ。


「実は、近々入団試験があるってお父様から聞いて。」


 ベンヌ、お前も当然……だよな。


「あったり前!チカラっていうのは正しく使わないと。」


 そうだな、正しく使わないと暴君というレッテルを貼られる。

 というより、今まで暴君と呼ばれていた奴の台詞とは思えないのだが。


「降りかかる火の粉は払う。当然よね。」


 それも、そうだな。


 暴君ベンヌの支配下で、毎日は平穏だった。

 あの事件が起こるまでは。


 とある日。情報の断片が俺の下にもやってきた。

 元北小と元南小のいざこざで、元南小の生徒が半殺しにされたと。

 俺は元北小で、ベンヌは元南小だ。

 余計な事しやがって、としか言えないのだが……ベンヌは怒り心頭。


「全く、教育が行き届いてないわ。」


 しかも、どうやら元北小のグループが元南小の一人をやったと。

 喧嘩というより、もはやリンチだ。


「という事で、ヴィオス。犯人達をシメて。」


 まあ、そういう事になるよな。

 犯人グループのリストは入手したので、全員を一発ずつぶん殴る。

 それだけの話だ。

 それだけの……


「ヴィオス。テメーのやり方には心底がっかりさせられたよ。」


 そのリーダーが言う。

 元北小の生徒は、元南小の生徒に逆らえない状態になっているのだと。

 そんな事知ったこっちゃないが。


「あ?テメーから暴力を取ったら何が残るんだ?この超絶ブサイクが。」


 はい、一撃追加な。お前死んだよ。


「今からでも遅くねえ、ベンヌの奴をボコせ。」


 それは出来ないんだ。……ベンヌは歴史に選ばれた人間、とは言えないが。

 それに従うのが俺の役目だからな。


「いつからそんなに腑抜けになったあ!」


 真正面から突っ込んでくる。顔面へ向けられた一撃を軽く回避して……

 カウンター。しっかり二発入れといた。


「……他に言いたい事、ある奴はいるか?」


 そんな、滅相もない。と他のメンバー。

 全員に制裁を加えて一件落着と言いたいところだが。

 どうもリンチに遭った元南小生徒、まだ入院中だと。

 俺なりのケジメをつけないといけない。


「そうだな、元北小は元南小に従う事。もちろん俺も含めてだ。」


 まあ、普通だったらそんな提案なんかしないが。

 俺はベンヌのご機嫌をとらなきゃいけない立場なんだ。


「あなた、恐れられていたんでしょう?よくそんな台詞が吐けるわね。」


 処世術という奴だ。


「まあ、いいならそれでいいけど。」


 俺はお前を補佐する立場だからな。可能な限り従うさ。

 完全に俺が折れ、向こうの要求を全て通した。


 そんな、1ページ目だ。この出来事は新しい人生の1ページに過ぎない。

 俺は何となくだが、この決定を後悔する時がやってくる事をぼんやりと……

 予想していた。


 ……大丈夫だよな?

 俺は、ベンヌに従う。盲従でもなんでもいい。

 こんなに美人なのに、恋愛感情などは不思議と湧かない相手だ。


 何故かと言われても、明確な答えは出ないのだ。

 ひとまずはこれで、一件落着としたいところだ。


 ……間違っては、いないよな?

 何度も自問自答を重ねるが……やはり明確な答えは出ない。


 嫌な予感だけがねっとりと、心臓を這う。

 なるほど、歴史に介入するという事は、こういう事なのか。

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