第10話4人は愉快に空の旅
「まほ、今度の休みの日、少しいいかしら?」
放課後、るりはまほに対しそう言った 。
現在、教室にはるりとまほ、そして、数人の生徒がいるのみだ。
ちなみに、ゆうなとゆきとは用事があるとのことで、ここにはいない。
「うん、特に予定は無いから大丈夫だよ。」
るりの誘いに対し、まほは頷き了承する。
「ちょっと、気になることがあるのよ。あの写真のことよ。」
「あの写真? あっ! わ、私が、写っていた写真だね。」
あの写真とは、まほが魔法少女ではないか?と、るりが疑うきっかけとなった写真だ。
まほは、特に気にしては居なかったが、るりには気になることがあるようだ。
「そうよ。あの写真の入手先を調べてみましょ。爺はあの写真、TV番組に投稿されたのを、相当無理を言って入手してきたらしいわ。」
「そうなんだね。」
「投稿されたってことは、投稿者がいるはずよね?」
「うん。」
「その投稿者を探してみない? もしかしたら、私と同じく、まほが魔法少女だってこと気づいてるかもしれないし・・・。」
魔法少女であることは、秘密だ。
しかし、バレてるかもしれない、そのことにまほは動揺する。
「た、たしかに! そ、そうだね・・・。どどど、どうしよう、私が魔法少女だって、バ、バレてたら・・・。」
「落ち着きなさい、まほ。まだ、バレてたと決まったわけではないわ。まあ、バレてたとしても、問題ないわよ。私が、来葉グループの総力を上げて口封じするから!」
頼もしすぎるその言葉に、まほは落ち着きを取り戻す。
「う、うん! まだ、バレてたと決まったわけではないよね! でも、どうやって調べるの?」
まほは、首をかしげる。
「そのことなんだけど、私に、いい考えがあるわ。直接その番組の人に、聞きましょ!」
「えっ!? そんなことできるの?」
驚くまほに対し、るりは頷く。
「もちろんよ。本当は、こっちに来てもらいたいところだけど、あっちも忙しいだろうから、こちらから会いに行くわ。」
「会いに行くってことは・・・」
「そうよ! TV局に、行くわよ!」
「え、えぇ!?」
まほは、思わず大きな声を出し驚いた。
「ん? どうしんたんだ、まほ。大きな声を出して。」
会話をしていた2人に近づく、1人の人物。
「あれ? ゆきと君? 委員の仕事終ったの?」
「あぁ、今日はすぐ終わった。帰り一緒に帰れるな!」
ゆきとである。
委員の仕事があったようだが、今日はすぐに終わらせたようだ。
「うん、今日は一緒に帰ろ! 今、るりちゃんとTV局に行く話をしてたの。ゆきと君も行く?」
「ちょ、まほ。それは・・・」
るりは、2人で行こうかと考えていたようだが、まほは思わずそれを口にしてしまった。
実際、まほが魔法少女であることは、ゆきとには秘密である。
そのため、写真のことを調べるには、魔法少女であることを知っている、るりと2人のほうが動きやすい。
「ん、そうなのか。うーん、俺も少し興味あるし、付いて行ってもいいか?」
「い、いいよね? るりちゃん?」
「わ、分かったわよ! 一緒に行きましょ!」
るりは、2人で行くのを諦めた。
こうして、まほ、るり、ゆきとの3人でTV局に行くことに・・・
「あれ? まほっちたち、集まって何してるの?」
「あ! ゆうなちゃん今ね・・・」
・・・ゆうなを加え、4人でTV局に行くことになった。
日曜日、4人は時計台の広場に来ていた。
分かりやすい場所ということで、ここが待ち合わせ場所に選ばれた。
「え~と。みんな、集まったわね。」
るりは、まほ、ゆうな、ゆきとの3人を確認するとそう言った。
「まさか、まほが到着最初で、俺が一番最後だったなんて・・・。」
「まほっち、こういう時は早いよね。」
「だ、だって楽しみだったんだもん!」
待ち合わせ場所への到着は、なんとまほが一番乗りだった。
「ところで、るりちゃん。どうやって行くの?」
「こっちよ!」
るりは、学園の方を指し示す。
「ん、学園の方に車かバス止めてるのか?」
ゆきとは、学園の方を向きながら、るりへと質問をする。
るりは、にやりと微笑む。
「まあ、行けば分かるわよ。」
そう言われ、3人は、るりへと続き学園へと向かった。
校門近くにたどり着いたところで、ゆうなは、あることに気づく。
「あれ? この音ってもしかして・・・。」
学園に近づくにつれ、バラバラと重い重低音が大きく鳴り響く。
その音は、屋上からのようだった。
ゆきととまほも、その音に気づく。
「なっ!? まさか、あれなのか?」
「えっ!? えええっ!?」
ヘリであった。
「そうよ。ヘリでパパパっと行くわよ!」
驚き、空いた口がふさがらない3人。
4人は屋上へと到着した。
屋上には、るりの執事ハワードとフォスター、メリッサが待っていた。
そして、そこにはもちろん、ヘリが待機していた。
但し、そこに待機していたのは普通のヘリではなく・・・
「ちょ、ちょっと待て! 俺、映画とかで、これ見たことあるぞ。」
「るりるり・・・。まさか、こんなヘリを用意してるなんて・・・。さすがね・・・。」
「な、なんだか、すごいおっきいヘリだね・・・。」
驚く3人、それもそのはず、るりの用意したヘリは、迷彩カラーの軍用ヘリだったのだ。
「わ、私は普通のヘリでいいって言ったのに、爺が張り切って軍用を用意しちゃったのよ!」
るりは、慌てながら弁解する。
「まあ、るりるりなら今更よね・・・。」
「そうだな・・・。」
「う、うん・・・。」
3人は、何かを納得したような目でるりを見る。
「な、何よ! みんなして! まあ、いいわ! そこの3人を紹介するわ!」
そこの3人とは、るりの執事たちのことである。
まほ、ゆうな、ゆきとは執事たちの方を見る。
「とりあえず、そこの白髪のヒゲがハワード、私の執事よ。あと、その金髪の男性がフォスター、女性がメリッサ。一応私の護衛よ。普段は隠れてるけど。」
るりは、ざっくりと執事たちを紹介した。
「お、お嬢様・・・。ヒゲはあんまりですぞ・・・。」
「るりお嬢様、紹介雑すぎますよ・・・。」
嘆く、ハワードとフォスター。
「まあ、いいんじゃない? 私たちのことは。今日の主役は、るりお嬢様たち4人なんだし。」
それを、メリッサはフォローする。
「そうよ! 今日の主役は私たちよ! あぁ、こっち側の紹介が、まだだったわね。・・・まあ、無くてもいいわね。 さっさと行きましょ!」
こうして、まほたちの紹介は省かれた。
まほたちは、「えっ・・・」といった顔をしていたが、るりは気にせず、まほたちをヘリへと誘導した。
ヘリの中は、まほたち4人と執事たち3人が乗っても余裕な広さである。
ヘリの運転は、フォスターが行うようだ。
そのヘリの中、まほたちは空の旅を楽しんでいた。
はずだった・・・。
「くっ、なんでお前ら平気なんだよ・・・。俺は、ちょっと高いのはダメかもしれない・・・。」
「あたしも、ゆきとほどではないけど、高いところは苦手かな・・・。」
ゆきとは、ヘリの中でぐったりとしていた。
そしてゆうなは、ぐったりとはしていないが、景色を見る余裕はないようだ。
「るりはともかく、まほも平気なのかよ・・・。」
問いかけられ、まほはゆきとの方を振り返る。
「う、うん。私は、高いところをいつも・・・」
「いつも?」
ゆきとは、まほを不審な目で見る。
「い、良い景色だよ!」
いつも飛んでいる、そう言いかけたまほは、焦りながら誤魔化す。
「まあ、いいや。とにかく俺は、この状況を耐えなければいけない。なにか良い方法は無いだろうか・・・。うぐっ! よ、酔ってきた・・・。」
ゆきとは、さらにぐったりする。
「だ、大丈夫!? ゆきと君!」
「重症ね・・・。とりあえず、爺、酔い止めをゆきとにお願い。少しは気休めになるかもしれないわ。」
同乗していた執事ハワードは、頷く。
そして、酔い止めを取り出し、それをゆきとへと渡す。
「ゆうなは大丈夫? 必要なら爺から貰うといいわ。」
「うん、あたしは大丈夫。」
ゆうなは、苦手なだけで酔うほどではないようだ。
「そう? 無理はしないでよね?」
「うん、ありがとう。」
ゆうなはるりへと微笑む。
るりは、少し照れくさそうにそっぽを向いた。
「まほ、ありがとう。だが、俺はここまでだ・・・。」
「ゆきと君! だだだ、大丈夫!?」
まほは、ゆきとを介抱していた。
「う、ダメかもしれない。いや、大丈夫かもしれない。いやいやいや・・・」
「どどど、どっちなんだろう?」
まほは困惑する。
「ゆきと、大丈夫そうね・・・。」
「そうね。まほっちとゆきと、まるでコントだね・・・。」
るりとゆうなは、そんな2人を呆れたように眺める。
「おう、お嬢様たち! そろそろ着くぞ!」
フォスターは、まほたちへ間もなく目的地に着くことを知らせる。
まほたち4人は、外の景色を確認する。
ヘリの向かう先には、TV局があった。
その屋上にはヘリポートがあり、そこへ向かっているようだった。
「やっと、着いたわね!」
「あ、あれが、TV局なんだね!」
「最初はちょっと怖かったけど、空の旅も悪く無いね。」
喜ぶ、まほとるり、そしてゆうな。
「や、やったぜ! やっとこの酔いから開放されるぜ!」
ゆきとも喜ぶ。
しかし・・・
「分かってると思うけど、帰りもこのヘリよ。」
「な!? 嘘だろ・・・。」
るりの無慈悲な言葉に、ゆきとはうなだれる。
そしてヘリは、TV局屋上のヘリポートへとゆっくり着陸した。